EVENT REPORT

Jan 2019

SDGs目標14 「海の豊かさを守る」を考える

「ここ最近、プラスチックストローの廃止や、ビニール袋ではなく紙袋を推奨するといった動きが話題になっていますが、それは本質的な解決策ではないと感じます。それよりも、“なぜそうした動きが起きているのか”という背景を知って一人一人が自分ごととして捉え、できることを行動に移していくことが必要です。そうでなければ過去のエコブーム同様に、ゴミの排出量は変わらないのではないかと僕は思っています」。

では、海のゴミはいったいどうすれば減らすことができるのだろうか。

古澤さんによると、なんと湘南海岸のゴミの約7割~8割は、下水や川を通じて街からやってくるのだという。その理由は下水道の仕組みにあり、大降雨時などには一定量の下水が処理場を通らず直接川へ流れ込む構造になっているため、街のゴミが排水溝などから川へ、そして海へと流れていってしまうのだ。

「今日この話を聞いたみなさんには、街と海は繋がっていて、海のゴミの多くは街からやってくるということを覚えていていただきたいです。大半のゴミは海水浴客や観光客が落としていくわけではなく、海のゴミは川から、川のゴミは街から、街のゴミは人の心が出している。街がきれいにならなければ、海はきれいにならないんです」。

海さくらでは人々が自分ごととしてこの問題に取り組めるよう、毎月のビーチクリーン活動以外にも、街のゴミ拾い「LEADS TO THE OCEAN!」や、きれいになったビーチで子どもたちがお相撲さんと対戦する「どすこいビーチクリーン」など、ユニークで楽しい取り組みを展開しながら、こうした事実を伝え続けている。

地球や人間にとって重要な役割をもつサンゴ

地球や人間にとって重要な役割をもつサンゴ

地球や人間にとって重要な役割をもつサンゴ

地球や人間にとって重要な役割をもつサンゴ

続いて、ジーエルイー合同会社代表の呉屋由希乃さんが、サンゴの現状と、彼女が開発した「サンゴに優しい日焼け止め」について話を聞かせてくれた。

冒頭、会場のスクリーンには“50%”という数字が映し出された。

「この数字が何を表しているかわかりますか?これは、この30年間で世界中の約半分のサンゴがなくなってしまったことを示しています」。

実は、サンゴはアマゾンの森よりもCO2の削減能力が優れているとも言われ、地球温暖化防止の観点においてとても重要な役割を担っている。

また、自然の防波堤となって高波や津波を防ぐ役割も果たしているため、サンゴがなくなることによって護岸工事が必要になっている地域もあるという。加えて、海洋生物の約30%が住みかとしているサンゴがなくなることは、そこに生息する小さな魚を餌とする大型の魚が減ってしまうことに繋がるなど、実はサンゴは私たちの生活に密接にかかわっている、大切な存在なのだ。

呉屋さん自身も、海を愛する沖縄県民の一人。サンゴ減少の原因が、海水温の上昇や生活排水などによる海洋汚染、配慮のないツーリズムなどにあることは以前から知っていた。だが海水浴に行ったある日、日焼け止めを塗る彼女に対してダイバーが放った「それ、サンゴが死んじゃうよ」という言葉をきっかけに、日焼け止めの成分などを調べてみたところ、衝撃的な事実を知ったという。

「世界中の日焼け止めのほとんどに、ごく微量でもサンゴにとって有害だと言われている物質が含まれていたんです。ある物質は、日焼け止めたった1滴に含まれる分量だけで、オリンピックプール約6個分相当のエリアに生息するサンゴのDNAに影響を与えるというデータもありました」。

当時呉屋さんは、サンゴにとって有害な物質を含まない日焼け止めはないのかと沖縄中を探し回った。しかしなかなか見つからず、やっとの思いで見つけた商品も“高価なオーガニック製品”という位置づけで、一般の人が手に取るようなものではなかったそうだ。そこで呉屋さんは、もっと手軽に手に入る商品をつくろうと決意し、クラウドファンディングで資金を調達。少しでも多くの人がサンゴに対して意識を向け、行動を変えるきっかけになればという想いで、敢えて「サンゴに優しい日焼け止め」というストレートな名前をつけて商品化した。

その後、呉屋さんの取り組みはメディアにも取り上げられ、国内だけではなく、海外からも応援の声が届いているという。

「今後は海外での販売もおこなうほか、新たにつくった使い切りタイプの商品を企業や自治体と組んで広く展開していきたいと思っています。SDGsの目標17に『一緒に目標を達成しよう』とあるように、私一人だけでなく、いろいろな方々とコラボレーションしながらこの問題にアプローチしていきたいと考えています」。

1

2

3

SDGs目標14 「海の豊かさを守る」を考える

古澤 純一郎

海さくら代表・発起人/古沢工業株式会社取締役。
1975年10月6日生まれ。身長178cm、体重96kg。趣味は運動、酒、沖縄旅行、海あそび。
船具屋の長男として生まれ、慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、大手デパートに入社し3年間勤務した後、広告代理店にて5年間マーケティング営業の業務に従事。退社後、古沢工業株式会社に入社し取締役に就任。現在に至る。学生時代は、慶應義塾体育会庭球部(テニス部)に所属し、脳を含む全身が筋肉で構成されていたが、現在は脳は筋肉のまま身体はほぼゼイ肉となる。

NPO法人海さくら
https://umisakura.com/

呉屋 由希乃

ジーエルイー合同会社代表。
琉球大学休学中に東京でイベント会社を起業し中退。その後、結婚を機にニューヨークへ移住、個人バイヤーとしてウェブ販売を経験した後、地元沖縄に戻りアパレルショップを開業。
ある時、日焼け止めがサンゴに害を与えていると知り、観光と環境の問題に取り組むべく8年間経営した店舗を売却。2017年『サンゴに優しい日焼け止め』の製造・販売を開始した。サンゴの美しい沖縄県の離島をはじめ、海外での啓蒙活動や販売にも取り組んでいる。
2017年DBJ女性新ビジネスプランコンペティションファイナリスト
東京都女性ベンチャー成長促進事業 APT Women第1期生

サンゴに優しい日焼け止め
https://www.coralisfriend.com

OTHER ARTICLE

このカテゴリの他の記事

いま、地域に求められる「らしさ」

REPORT

いま、地域に求められる「らしさ」

女性企業家が伝える「自分ならでは」の事業

REPORT

女性企業家が伝える「自分ならでは」の事業

<コミュニケーション×テクノロジー>が
一次産業の未来を変える

REPORT

<コミュニケーション×テクノロジー>が 一次産業の未来を変える