映画「TSUKIJI WONDERLAND」プロデューサーが語る
何故、私が「築地市場」を映画にしたか
世界に通用する映画へ、クラウドファンディングの活用
現在、ほとんどの映画が製作委員会方式で作られているなか、「TSUKIJI WONDERLAND」は、手島さんが勤める松竹が主体となり製作をおこなった。
「松竹では、いままでドキュメンタリーを手掛けたことはほとんどなかったのですが、築地に本社があり、かつ日本の文化を発信する会社として、築地市場のドキュメンタリー映画を製作することについて後押ししてくれました」。
しかし、日本ではドキュメンタリー映画の市場は大きいものではなく、そのため予算が限られているという課題があった。「TSUKIJI WONDERLAND」を世界からも認められるドキュメンタリー映画にしたいという想いを実現するには予算が足りなかった手島さんは当時を振り返る。
そこで、手島さんたちがおこなったのがクラウドファンディングであった。クラウドファンディングを通して伝えた映画への想いは賛同を呼び、900万円ほどの資金を集めることに成功した。
「クラウドファンディングで資金を調達できたことで、取材日数の確保や、美しい映像を実現するための、撮影方法や最新の機材を採用することができました」。
映画冒頭の空撮シーンは、クラウドファンディングがあったからこそ実現したという。東京湾が近い地の利や銀座がいかに近いか、といったことを観る人が最初から把握できるように撮影されており、記憶に残る場面となっている。
また、クラウドファンディングをおこなったのは、資金調達の他にもう一つの理由があった。
「クラウドファンディングをおこなったもう一つの理由は、応援してくれる仲間を増やして、一緒に映画を作っていきたかったから。日本の食文化を未来の子どもたちや世界に発信したいという想いは、多くの人に共感してもらえると思っていました。製作段階から関わってもらうことで、その人たちがハブになって情報発信してもらえると考えました」。
そして、2016年「TSUKIJI WONDERLAND」は公開し、日本だけではなく、海外からも多くの評価を獲得することとなった。
映画を通じたコミュニケーションの創出へ、新たな取り組みをスタート
「TSUKIJI WONDERLAND」の公開から2年が経った2018年、映画を通してコミュニケーションを創出することを目的とした手島さんの新たなプロジェクト、「PINTSCOPE(ピントスコープ)」が始まった。
「いま映画の情報はインターネット上であふれていて、いろいろな人の評点も見られますが、映画を楽しむ原点はもっとパーソナルなものではないかと感じています」。
「PINTSCOPE」のテーマは「人と映画の物語」。一般的な評価軸とは違う、誰かにとっての特別な映画があってもいい。その話を聞くことで、相手のことを知れたり、自分はどう思うのか考えてみたり。時代を超えて、コミュニケーションの媒体になれるのが映画。
「この『PINTSCOPE』に来れば、誰かの物語を通して観たい映画がみつかると思います。最近自分が観たい映画が何かわからない人、日常に少し刺激が欲しい、そんな時に来てもらって、観たい映画を見つけてもらえるとうれしいです」。
映画を通した手島さんの活動はこれからも続いていく。
手島さんの講演の後は、会場にお越しいただいた「TSUKIJI WONDERLAND」の遠藤監督にもご登壇いただき、海外で上映した際の観客からの反応や、撮影の中で出会った築地で働く人々の魅力、築地市場に通って感じた四季の移り変わり、映画制作時に苦労されたことなどをお話いただいた。
会場からも質問が相次ぎ、大盛況のままイベントは終了した。
<Oct.2018 藤村 祥子(WAO事務局)>
グラフィックレコーディング/鈴木あさみ
映画「TSUKIJI WONDERLAND」プロデューサーが語る
何故、私が「築地市場」を映画にしたか
手島 麻依子
松竹株式会社 宣伝プロデューサー。食への興味が高じ2009年頃から築地市場に通い始める。その文化的魅力を国内外に発信したい、との思いから映画製作を決意。資金調達の一環として、クラウドファンディングを実施。1年以上の撮影期間を経て、2016年映画「TSUKIJI WONDERLAND(築地ワンダーランド)」を公開。世界各国の映画祭でも上映され反響を呼ぶ。
2018年、”人と映画の物語”を届けるウェブメディア「PINTSCOPE(ピントスコープ)」を立ち上げ、新たな映画との出会いを届けるプロジェクトを実行中。
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