「発酵のひみつ教えます」
発酵のスターターと言われる「麹」
日本では、地域の文化や知恵によって、さまざまな発酵食文化を生み出してきた。こうした日本の発酵食文化を支えてきた菌のなかでも、日本には「国菌」と呼ばれる特別な菌がある。それが「麹」だ。
「麹は米や麦に入っている菌で、旨み・甘みのもとになります。最近では海外でも日本酒や醤油が作られていますが、実は日本から麹を持っていって醸造しています」と仁さん。
「麹のすごいところは、酵素の宝庫であり、分子の大きいデンプンやタンパク質を分解できること。お米を噛み続けると口の中が甘くなった経験はありませんか?それが酵素の力です。体内の消化酵素が働いた結果です。米のデンプンを分解して甘みを作り、その甘みに酵母がくっついてアルコール発酵が始まる。これが麹が発酵食品のスターターといわれる理由です」。
発酵と素材による全国の味噌の違い
味噌蔵が好きで、全国を巡っているという仁さん。地域性を反映しながら発展してきた各地のさまざまな味噌の違いを、教えてくれた。
-仕込み時間の長さによって変わる色
「大きく分けて、味噌には“白味噌”と“赤味噌”があります。味噌の仕込みはじめは全て白色。時間が経つと色が赤くなります。仕込み期間がもっとも短い“白味噌”は京都の『西京味噌』で、仕込んでから2週間から1ヶ月くらいで出来ます。一方“赤味噌”は、仕込み期間の長いもの。たとえば“赤味噌”の一つ、愛知の『八丁味噌』は2年から3年寝かして作る味噌です。味の特徴として“白味噌”はあっさり、“赤味噌”は旨みが強く味噌の香りが強いです」。
-取れる作物によって地域ごとに違いが出る、麹の種類による分類
「もう一つ、味噌は原料の麹によって分類ができます。味噌は大量生産、大量消費の現代にあっても、地域性が強く残っている食品です。全国の8割ぐらいで食べられているのが、米麹を使った『米味噌』といわれています。南の方で特徴的なのは、九州や四国、山口県の一部で食べられている『麦味噌』。麹が多めで少し甘い“白味噌”です。また東海地方でよく食べられる『豆味噌』は、大豆を3日間かけて蒸すことで大豆自体を麹にし、塩水と仕込むという味噌です。私たちの住んでいる山梨では、米麹と麦麹をあわせた『甲州味噌』が作られています。山梨は昔から米があまり取れない地域だったので、田んぼの裏作で作れる麦が活用されました。狭い場所で知恵を絞って作ったのが『甲州味噌』だといわれます。山梨の郷土料理の『ほうとう』も小麦の麺に麦味噌で味付けをしたもの。やはりお米は貴重だったのだと伺えます」。
「発酵のひみつ教えます」
五味醤油株式会社
五味 仁:東京農業大学で醸造と経営の勉強をする。卒業後、タイの醤油メーカーに勤めた後、山梨に戻り家業である五味醤油へ。
五味 洋子:兄仁氏と同じく、東京農業大学醸造科学科を卒業後、ライフスタイル提案会社に就職後、五味醤油へ。兄と「発酵文化」伝えるべく奮闘中。
▶︎五味醤油:http://yamagomiso.com/
▶︎てまえみそのうた:https://www.youtube.com/watch?v=wG-yslfgw6I
▶︎こうじのうた:https://www.youtube.com/watch?v=-PdPCGkaOyM
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