「想い」を起点にした事業の生み出しかた
起業へと突き動かした「想い」
商社マンとして働いていた遠山さんが、「Soup Stock Tokyo」第1号店(1999年出店)を立ち上げるまでの経緯を教えてくれた。
「三菱商事に入社して10年が経ったころ、優秀な部長のもとで、やりがいのある仕事をしていました。しかし、ふと『部長がいなかったらどうなってしまうのか?』と考えたとき、焦燥感に駆られましてね。社内には立派な仕事はたくさんある、尊敬する先輩もいるけれども、このまま定年まで過ごすことに、自分は満足できるのかって考えはじめたんです」。
そうした気持ちを抱えているなか、遠山さんは、ある言葉をきっかけに、“自分のやりたいことをやってみよう”と、行動に移すことになる。
「32歳のとき、自分の夢を聞かれて、『絵の個展とかやってみたいなぁ』と答えると、『いつやるの?年齢は四捨五入ではなくて、三捨四入だぞ。30代は33歳までだ』と言われ、その言葉に動かされました」。
その日から週に1枚以上、合計70点ほどの作品を描き、翌年には念願の個展を開催。展示した作品は完売し、達成感を感じていた遠山さん。しかし、個展の開催に協力してくれた方に感謝を伝えたところ、「そんな小さな夢に付き合っていたわけではない。これはスタートだろ」といわれたという。
「衝撃的な言葉でしたが、改めてこれで終わってはいけないと覚悟しました」。
そして、遠山さんは、個展でお世話になった方々160名に手紙を送った。その内容は、「皆さんのおかげで個展を終えることが出来ました。その恩に報いるために成功することに決めました。何をするかは未定です」といった、自分自身への決意表明ともいえる手紙であった。
物語が生んだ、新しいスープ専門店
その後、「自分は何をやりたいのか?」という問いに真剣に向き合った遠山さん。その結果、導き出した一つの答えが「食」であった。当時、三菱商事と資本関係のあったケンタッキー・フライド・チキンへの出向を希望し、そこで、スープ専門店「Soup Stock Tokyo」を立ち上げることになる。
「ある日、“女性がスープを飲んでほっとしているシーン”が思い浮かびましてね。その時、すごく大事なことに出会えた気がしたんです。そこから3ヶ月かけて『スープのある1日』という、すべて過去形で書いた物語調の事業企画書を書き上げました。どうして物語にしたかというと、提案相手にも、自分が実現したいと思っている景色を見て、評価してもらいたいと思ったからです」。
遠山さんの「想い」は共感を呼び、社内ベンチャー企業「スマイルズ」として、スタートをきった。2008年にはMBOを実施し独立起業となり、いまでは全国60店舗を超えるまでに「Soup Stock Tokyo」は成長した。
その後、遠山さんは、ネクタイブランド「giraffe」やセレクトリサイクルショップ「PASS THE BATON」など、「想い」を起点とした事業を展開していく。
「想い」を起点にした事業の生み出しかた
遠山 正道
株式会社スマイルズ、代表取締役社長。慶應義塾大学卒業後、85年三菱商事株式会社入社。2000年株式会社スマイルズを設立、代表取締役社長に就任。現在、「Soup Stock Tokyo」のほか、ネクタイ専門店「giraffe」、セレクトリサイクルショップ「PASS THE BATON」、ファミリーレストラン「100本のスプーン」、コンテンポラリーフード&リカー「PAVILION」、海苔弁専門店「刷毛じょうゆ 海苔弁山登り」などを展開。「生活価値の拡充」を企業理念に掲げ、既成概念や業界の枠にとらわれず、現代の新しい生活の在り方を提案している。
株式会社 スマイルズ:http://www.smiles.co.jp/
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