EVENT REPORT

May 2017

「発酵のひみつ教えます」

古くから日本に伝わる発酵食品。塩麹、ぬか漬け、甘酒など、最近こうした発酵食品が改めて注目を集めている。

山梨県甲府市で「甲州味噌」の製造販売を行う創業明治元年(1868年)の老舗店、五味醤油(株)の五味仁さん、五味洋子さん兄妹をお招きし、「発酵食品のひみつ」を探るイベントを開催した。

腐った豆は食べられないのに、発酵した豆は美味しい

腐った豆は食べられないのに、発酵した豆は美味しい

腐った豆は食べられないのに、発酵した豆は美味しい

イベントは、「『発酵』と『腐敗』。この似て非なる2つの現象がありますが、なぜ発酵は美味しい食品を生み出すのでしょうか」といった洋子さんの問いかけから始まった。

「日本には、納豆や味噌、醤油など、多くの発酵食品があります。納豆でいえば、納豆菌が働いて大豆のタンパク質を分解し、旨み成分であるアミノ酸を作り出しています。そうした人間に有効な微生物の働きによって発酵が起こり、食べられる豆になるんです。一方腐った豆というのは、腐敗菌が働き、悪玉菌が付着することで、美味しくない、食中毒を引き起こす豆となるんです。ただ、納豆はすごく微妙な発酵食品です。日本人は美味しいといって食べますが、海外では『腐ってる!』という人もいます。つまり発酵の定義は非常に曖昧で、発酵しているか腐敗しているかという判断は、人それぞれ異なるということです」。

発酵菌は「酵母菌」・「細菌」・「カビ」と、大きく3つの微生物に分類できるという。こうした菌の働きによって発酵した食品は、発酵前よりも風味が増して美味しくなったり、栄養価が高くなったり、また保存が効くようになったりする。

それぞれの発酵菌の特徴とその働きについて、洋子さんに紹介してもらった。



①酵母菌
「酵母菌はアルコール発酵を起こす微生物です。糖分を食べ、アルコールと二酸化炭素を作る働きを持っています。ビールは、大麦を発芽させ、麦芽を糖化し、甘くなったところに、ビール酵母を添加することで出来上がります。微生物が糖分を食べて、おならをしたのがビールの泡と思ってもらえると良いかと思います。今夜ビールを飲むときはビール酵母の働きを思いだしてもらえると、いつも以上に楽しく飲めると思います」。

②細菌(乳酸菌)
「ヨーグルトなどで良く聞く乳酸菌は、糖質から乳酸という酸っぱい酸を作る菌です。ヨーグルトのほかにぬか漬けも乳酸菌の働きがもたらす発酵食品です。野菜はそのまま置いておくと腐ってしまいますが、ぬかに漬け込むことによって乳酸菌が乳酸発酵を起こし、保存性を高めます。こうして出来上がるのがぬか漬けです」。

③カビ
「世界一硬い食品ともいわれる鰹節。これも実は発酵食品です。鰹をいぶし、乾燥させたものにカビを付けることで、鰹節になります。硬くなるのもカビの働きによるものです。カビは、鰹の中の水分を出して乾燥させるとともに、脂肪を分解させて魚の臭みを除去していきます。カビによってタンパク質が旨みに変わり、出汁のもとになります」。

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「発酵のひみつ教えます」

五味醤油株式会社

五味 仁:東京農業大学で醸造と経営の勉強をする。卒業後、タイの醤油メーカーに勤めた後、山梨に戻り家業である五味醤油へ。
五味 洋子:兄仁氏と同じく、東京農業大学醸造科学科を卒業後、ライフスタイル提案会社に就職後、五味醤油へ。兄と「発酵文化」伝えるべく奮闘中。

▶︎五味醤油:http://yamagomiso.com/ 
▶︎てまえみそのうた:https://www.youtube.com/watch?v=wG-yslfgw6I
▶︎こうじのうた:https://www.youtube.com/watch?v=-PdPCGkaOyM

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