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Nov 2020

SDGsの視点から考える事業創造プログラム

時代は歴史的な大変革期を迎え、長らく続いてきたビジネスモデルが廃れ、新しいビジネスが次々と生まれている。このような社会背景の中、B2B事業が主体である凸版印刷が自社の事業を持続可能なものにしていくためには、クライアントが今求めているニーズに応えるだけでなく、時代の変化を先取りし、クライアントがまだ気づいていない機会やリスクをとらえて可視化した上で、製品やサービスを提案していくことが重要だ。

こうした観点から、WAOでは今後の社会変化を見据えて事業を再考するきっかけとしてSDGsの視点を取り入れた事業創造プログラムを実施。今回はその概要について紹介する。

プログラムの概要

プログラムの概要

このプログラムは先述した考えのもと、WAOの外部サポーター町井則雄氏と共同で企画し、現場のリーダーである課長層に対して全3回にわたって実施した。具体的には

Day1:SDGsの考え方の本質を理解する
Day2:他社事例を通じて具体的にSDGsを事業に落とし込むイメージをつかむ
Day3:SDGsの視点を踏まえて自身の担当するクライアントの課題・ニーズを導き出し、トッパンが提供する商品・サービスを再考する

というステップで進めていった。

本プログラムでは全3回を通じてバリュープロポジションキャンバス(Value Proposition Canvas/以下VPC)を応用したフレームワークを使用。VPCとは、「自社のサービスやプロダクト価値」と「顧客のニーズ」とのずれを解消するためのもので、右側に顧客の情報を、左側にパリュープロポジション(=顧客のニーズに合致する価値)を構成する要素を記載し比較することで、バリューがニーズに合致するかを確認することができる。今回は、右側の顧客の情報に「社会(Social)が期待する効果」を加えることでSDGsの視点を盛り込んだ内容に変換したVPC+Sとして活用した。(右図参照)

「社会」という視点を加えたことに伴い、クライアントの課題やニーズがどのように変化するのか、またその新たな課題やニーズに対して自社トッパンはどのような商品・サービスを提供できるのかということを考えていった。

Day1:SDGsの本質を理解する

Day1:SDGsの本質を理解する

初日はSDGsライター兼ダイベストメントコミュニケーターとして活動されている松尾沙織さんをお招きし、SDGsの考え方をはじめ、SDGsに取り組む必要性や今後起こり得る社会的リスクについてお話しいただいた。

日頃口にする食料の約6割を世界に頼っている日本が外交問題や気候変動によって輸入がストップした場合の食糧難のリスクや、私たちの生活のあらゆる場面で使用されているパーム油に関連する児童労働や生態系破壊など、私たちが間接的に世界の問題に関与していることなどを紹介した上で、これらをバックキャスティングで本気で考えることが今、求められているのだと教えてくれた。

1年間に地球が生産できる資源の量を人間が使い尽くしてしまう日を「アース・オーバーシュート・デー」と呼ぶが、2020年は8月22日にその日を迎え、以降に消費する資源は未来に負債を負っていることになる。未来の原資を前借りしているこの状況は1970年代から続いているといい、これを見直す意味でもSDGsへの取り組みが必要不可欠なのだ。

松尾さんのお話を聞いて理解が深まったところで、参加者たちは自身のクライアントがSDGsを考慮しないことによって起こりうる事業リスクを考え、課題意識を高めた。

Day2:他社事例を通じて具体的にSDGsを事業に落とし込むイメージをつかむ

Day2:他社事例を通じて具体的にSDGsを事業に落とし込むイメージをつかむ

第2回は、SDGsという言葉が生まれるずっと前から持続可能な社会を実現するための事業活動を実践されているサラヤ株式会社(以下サラヤ)取締役の代島裕世さんをお招きして、同社の事業についてお話しいただいた。

2004年、サラヤはパーム油を使用したヤシノミ洗剤を製造していたことで大きなバッシングを受けた。理由は、ボルネオでパーム油の原料となるアブラヤシ農園の拡大によって熱帯雨林が減少し、間接的にそこに生息する野生動物を絶滅の危機に追いやっていたからだった。これをきっかけに事業変革に取り組み始めた同社だが、その変革はパーム油を使わない商品開発だけにとどまらなかった。当時アフリカで手洗い消毒が行われておらず、ひいてはそういった衛生教育が行われていないために出産時の母子死亡率が高いことを知った経営層は、自社事業との親和性の高さに事業性と社会貢献両方のチャンスを感じ、ウガンダで現地法人を立ち上げた。病院への手洗い消毒の啓蒙活動を経て、ウガンダでは「サラヤする(=手洗いする)」と言われるようになるほど浸透し、現在はアフリカにおいて圧倒的なシェアを獲得しているという。

代島さんは、「“今の自社のビジネスには問題があるかもしれない”という気づきがないと、SDGsはいつまでも他人事のままできちんと理解できない。ビジネスとチャリティーを両輪で走らせる、という認識を持つとうまくいくと思っています」と、事業活動にSDGsを組み込むためのヒントを教えてくれた。

SDGsが単なる社会貢献ではなく、ビジネスにおいて有効に機能させられることを学んだ参加者からは、「今後ビジネス創造をしていく上でのヒントになった」「本業で社会課題を解決すること=ビジネス拡大になることが理解できた」という声があがった。

参加者はDay1後に各自作成していたVPC+Sフォーマットを今回の代島さんのお話を受けてブラッシュアップし、最終日のDay3へ臨んだ。

Day3:クライアントの事業にSDGsの視点を取り入れ、自社が提供する商品・サービスを再考する

Day3:クライアントの事業にSDGsの視点を取り入れ、自社が提供する商品・サービスを再考する

Day2後、参加者はWAOサポーターの町井さんにアドバイスをいただきながらVPC+Sのブラッシュアップを繰り返しおこなってきた。Day3では参加者全員が最新版のVPC+Sを発表し、それぞれSDGsの視点をどのようにビジネスに反映させたのかを共有した。

各参加者の発表後、今回の外部講師である水上貴央さんと町井さんから、ビジネスの視点とSDGsの視点の両面からフィードバックをいただいた。水上さんは弁護士でありながら、国の事業仕分けやエネルギービジネスに携わっており、そうした経験や知識からビジネスの観点における有益なアドバイスを。町井さんからは、初回からのブラッシュアップの経緯をすべて見てきた立場から最後のフィードバックを受ける形となった。

ここでもらったフィードバックを反映させた最終案は、クライアントに対してSDGsの視点を取り入れた新たな提案として、全参加者が自身の上司にプレゼンテーションをおこなった。
ここからは各部署において、それらの案をクライアントにアプローチする事業戦略の一つとして活用してほしい旨を事務局からお伝えし、本プログラムは終了した。


<Nov.2020 鈴木 潤子(WAO事務局)>

PROJECT

凸版印刷㈱ ミドルマネジメント層(選抜)

イメージ1

▶Day1外部有識者:松尾沙織氏(左上)
SDGsライター/ダイベストメントコミュニケーター

1984年 東京都武蔵野市生まれ。2011年の震災をきっかけに、当時の働き方や社会の持続可能性に疑問を持ち、働いていたアパレル企業を5年で退社。「ソーシャルデザイン」という言葉に出会い、NPO法人グリーンズにてライターインターンを経て、編集学校を卒業。現在はフリーランスのライターとして、さまざまなメディアで「SDGs」や「サステナビリティ」を紹介する記事を執筆他、登壇、SDGs講座コーディネート、学びの場「ACT SDGs」を主宰。また、「ダイベストメントコミュニケーター」として気候変動の問題を広める活動をしている。


▶Day2外部有識者:代島 裕世氏(右上)
サラヤ株式会社 取締役・コミュニケーション本部 本部長 兼 コンシューマー事業本部 副本部長

1965年埼玉県生まれ。89年早稲田大学第一文学部卒業。雑誌編集、ドキュメンタリー映画の制作、タクシー運転手などを経験した後、95年サラヤ入社。商品企画、広告宣伝、広報、マーケティングを担当。2013年11月から現職。
SDGs先進企業として注目されるサラヤ株式会社内でアラウシリーズの開発やアフリカでのユニセフとの共同プロジェクト「100万人の手洗いプロジェクト」など、事業性と社会貢献性を両立させた戦略的プロジェクトを立ち上げてきた実績を持つ。


▶Day3外部有識者:水上 貴央氏(左下)
株式会社ソシオフォワード代表取締役・弁護士

一橋大学商学部経営学科卒業後、銀行系シンクタンクを経て早稲田大学大学院法務研究科修了、2008年より弁護士、現在は早稲田リーガルコモンズ法律事務所にてパートナー弁護士を務める。主な社会活動としては、国の事業仕分け、行政事業レビューの民間評価者(2010年から2015年)、消費者委員会東京電力値上げ問題WG有識者(2012年)、UR都市機構契約監視委員(現任)、飯田市地域エネルギービジネスコーディネート組織タスクフォース委員(現任)、青山学院大学法務研究科助教(現任)、NPO法人再エネ事業を支援する法律実務の会(理事長)等がある


▶プログラム企画/WAO外部サポーター:町井則雄氏(右下)
株式会社シンカ 代表取締役社長

前職の日本財団では CSR 企画推進チームのチームリーダとして、「日本財団公益コミュニティサイト『CANPAN(カンパン)』」の企画・開発や企業との連携による社会課題の解決に向けた事業づくりを担当。2016年、持続可能な社会づくりに向けたイノベーション事業をプローデュースするシンカを設立。経済産業省地域新成長産業創出促進事業審査委員、内閣府「新しい公共推進会議」情報開示・発信基盤に関するワーキング・グループ委員、社会起業大学ビジネスマネジメント講師など歴任。


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