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Jan 2020

数字では計れない価値を届けたい

久野 義憲( 株式会社アンビエンテック 代表取締役社長 )

「デザインも理系のバックグラウンドもなく、初めはなにをしたらいいか全く分からなかった」。そう話すのは、LEDコードレスデザイン照明の企画・デザインから製造までを手掛ける株式会社アンビエンテック 代表取締役社長の久野義憲さん。

“モノづくりがしたい”という純粋な気持ちでこの世界へ飛び込んで20年。いまでは「自分は一生照明で仕事をしていくんだと自信を持って言える」と話す。そんな久野さんに、ご自身の仕事において大切にしていることや、新しいことに挑戦する上でのヒントについてお話を伺った。

日本の夜をもっと“夜らしく”

久野さんが照明を扱うようになったきっかを教えてください。

久野さんが照明を扱うようになったきっかを教えてください。

僕はずっと、日本の夜は明るすぎて、あまりにも夜らしくないなと思っていたんですよね。昔から、白くて眩しい蛍光灯の明かりの下でご飯を食べたり、好きな音楽を聴いたりするのがリラックスできなくてすごく嫌でした。

対照的に、ヨーロッパの夜ってすごく暗いんですよ。でもそれがなんだか心地良いし、落ち着くし、とっても“夜らしい”。加えて上質な空間というのもたいてい暗い。たとえばレストランなんかは星の数が多いところの方が暗かったりします。でも真っ暗ではなくて、コントラストがちゃんとある落ち着ける空間なんです。日本でももっとそういった夜らしい、居心地が良いと感じられる空間を生活の中につくりたいと思ったのがきっかけです。

ご自身の原体験がきっかけになったのですね。

そうですね。でも、夜を“夜らしい”と思う感覚って案外僕たち人間にとって大事なことなんじゃないかと思うんです。太陽が沈んできれいな夕焼けが見えて、やがて真っ暗になる。これは地球が生まれた時から繰り返されてきた自然なサイクルです。だから夜を明るく昼間のように煌々と照らすことは、これから寝ようとする明かりや空間ではないわけです。

緊張感からも解き放たれないし、それがストレスにもつながっていると思う。そういう意味でも、夜ってやっぱり暗くなきゃダメだと思うんですよね。

その想いを具体的に製品に落とし込んでいく上ではどのような工夫があったのでしょうか。

その想いを具体的に製品に落とし込んでいく上ではどのような工夫があったのでしょうか。

照明には2つの種類があって、手元を照らすためのタスクライトというものと、アンビエントライトと呼ばれる空間をつくるライトがあります。

これは“タスク&アンビエント”というヨーロッパでは一般的な考え方なのですが、日本の照明空間はだいたいシーリングライトがついていて、上から均一に部屋全体を明るく照らしてしまうのでコントラストがなく、雰囲気もないというものがほとんどでした。であれば、いっそそれらの照明を全て消してしまって、必要なところだけ明るくするという形で空間をつくれば良いのではないかと考えました。変な話、“部屋を暗くするための照明”ですね。どうやって自分の居心地の良い空間をつくっていけるのかということを追求していった結果、出来上がったのがアンビエンテックの製品です。

照明の面白いところは、プロダクト自体だけでなく空間もつくれることができること、ものは小さいけれどやれることが意外と大きいということだと思っています。

人の感性にも訴えかけることができるので、それが長く使ってもらえるチャンスにもなるのも良いところだなと思いますね。

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PROFILE

久野 義憲(株式会社アンビエンテック 代表取締役社長 )

1969年愛知県名古屋市生まれ。愛知大学卒業後、㈱プラザクリエイトに入社。香港駐在、フィルム映像のデジタル化に向けた新規事業等に関わる。
同社を退職後1999年に設立した㈱エーオーアイ・ジャパンで水中撮影機材のOEM事業を大手カメラメーカー向けに開始。2009年には㈱アンビエンテックを設立し、コードレス照明ブランドとして製品展開を始める。
現在は水中撮影機材で培った独自の蓄電式LED制御技術と防水技術を強みとして、ダイビング用水中ライトの“RGBlue”、インテリア照明ブランドの“ambienTec”という対極ともいえる業界で本格的照明機器のグローバルブランドを目指している。


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