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Mar 2017

ユーザーのリアルな反応が創造力を広げてくれる

高萩昭範( 株式会社Moff  代表取締役 )

ウェアラブル・スマートトイ「Moff Band(モフバンド)」をご存じだろうか。

「Moff Band」は、ウェアラブルセンサーを搭載した腕時計型のバンドの動きにアプリが反応し、あらゆる動きを遊びに変えてしまうスマートトイである。

この「Moff Band」を世に送り出したのが、2014年3月、Kickstarterでわずか48時間以内に目標金額の2万ドルを集めスタートした株式会社Moff。現在ではスマートトイの分野を越え、ウェアラブルセンサーから得られるデータを活用した介護予防の分野まで活動を広げている。

Moffの代表取締役社長、高萩昭範(たかはぎ あきのり)さんは、「Moffは、人間がコンピューターに合わせていた世界からコンピューターが人間に合わせる世界へと変えるヒューマン・インターフェースデバイスを創造する企業」を目指していると話す。

画面を越えた体験を提供したかった

Moff はどのようにして生まれたのでしょうか。

Moff はどのようにして生まれたのでしょうか。

画面を越えた体験を提供したかった

(高萩氏)Moffが生まれるきっかけは、2013年に大阪で‟IT×ものづくり“をテーマに開催した「ものアプリハッカソン」に興味本位で参加したことです。そのイベントで結成されたチームメンバーがMoffの創業メンバーです。

そこで僕らが開発したのは「Moff Band」ではなく、ぬいぐるみに様々なセンサーを搭載した、家庭でのコミュニケーションを目的とした製品でした。いま話すと恥ずかしいのですが、怒りなどの感情が起きたとき、その感情を直接に相手にぶつけるのではなく、ぬいぐるみにアクションを加えると、アクションの強さなどに応じてアプリからコミュニケーションスタンプが送れる機能をもった製品です。

その後、シリコンバレーツアーに参加する機会がありまして、その製品を現地の投資家にみせたら、意外に評価されたのでやり続けようと思いました。

ただ、シリコンバレーから戻ってきてユーザーインタビューなどを重ねてみたら、そもそものニーズが見当たらなく、コンセプトから練り直すことになりましてね。そうして完成したのが「Moff Band」です。

「Moff Band」の根底にある想いとはどのようなものでしょうか。

(高萩氏)アプリだけで完結するのではなく、アプリを手段としてカラダを動かすことによって、人を生き生きさせることをテーマにした製品やサービスをつくりたいと思っていました。

そうしたなか、以前から子どもがスマホ画面に没頭してゲームをおこなう姿に違和感を持っていたことから、スマホ画面を越えて、生き生きとしたリアルな体験を子どもに提供したいという想いをカタチにしたのが「Moff Band」です。

そうした「Moff Band」への想いが起業を決意させたのですか。

(高萩氏)実は、当初は起業ありきで「Moff Band」を開発しようとは思っていなかったんです。こういうサービスや製品があったらいいよなってことだけをメンバーで共有しながら、ワイワイやっていました。起業ではなく、プロジェクト感覚ですかね。

そんな時間を過ごしていたとき、「Moff Band」のプロトタイプを知り合いの子ども達に試してもらうことになりました。そうしたら、子ども達がすごく熱狂してくれたんです。その光景を見ながら、「これを世の中に出したら、なんかあるんじゃないか」という感覚が湧いてきてしまって、それならば僕らがやった方がいいなと思いましてね。ほかにも起業するにあたっては様々な要因がありましたが、ダイレクトな要因といえば、この子ども達の反響を目の当たりにしたことです。

事業領域拡大のためには、自社で全てをまかなわない

いまや「Moff Band」の技術は、スマートトイのB2Cという領域を越えて、介護予防サービスのB2Bの領域でも活用されていますね。

いまや「Moff Band」の技術は、スマートトイのB2Cという領域を越えて、介護予防サービスのB2Bの領域でも活用されていますね。

(高萩氏)「Moff Band」は、開発当初から介護予防と相性が良いといわれてきました。僕たちは、課題に対して、“良い方向にもっていける動機づけ”をおこなうことを価値としていますので、介護という世界共通の課題に対して関与していくことは有難い発見でした。ただ、会社を立ち上げたときは手が回らなくて(笑)。

しばらくしてから、知り合いを通じてスポーツ健康科学の先生にお会いする機会があり、そこで「Moff Band」を見せたら、「これは介護予防にも使える」といわれたことをきっかけに本腰を入れ始めました。そこから先生に具体的なアドバイスもいただきながら開発を進めていると、興味を持ってくれる企業が現れて、MoffのB2B事業として加速していきました。

いまは介護予防のサービスについては実証実験中で、2017年の春ごろにはサービスをローンチできればと思っています。

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PROFILE

高萩昭範(株式会社Moff 代表取締役)

京都大学法学部を卒業後、A.T. カーニーに就職。その後、メルセデス・ベンツ日本および外資系食品メーカーで商品企画を担当。2013年1月に大阪市で開催された『ものアプリハッカソン』への参加をきっかけに、ウエアラブルデバイスの開発を目指してMoffを設立。2014年2月下旬にWebサイトおよびMWC2014にて『Moff』を発表。Kickstarterでは48時間で目標額を達成するなど大きな話題を呼んだ。


株式会社Moff(http://jp.moff.mobi/)

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