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Feb 2017

“出会い”によって生まれるイノベーション

本間勇輝( 株式会社ポケットマルシェ  取締役COO )

農家の高齢化、担い手の減少、耕作放棄地など、多くの課題を抱える一次産業。

そうした課題の根幹にあるのは「生産者と消費者の関係が遠くなってしまった」ことにあると話すのは、一般社団法人日本食べる通信リーグで理事を務める本間勇輝さん。

“世なおしは、食なおし”をスローガンに掲げ、2013年に東北から始まった食べ物付定期情報誌の「東北食べる通信」。分断された生産者と消費者の関係をつなぐことで一次産業を再生させていくことを目的とするこの取り組みは、いまでは東北だけではなく全国37(2017年1月現在)もの「食べる通信」が創刊されるまでに拡大している。

そして、本間さんたちはこうした取組を拡張させていこうと2016年9月に生産者から直接買えるスマホアプリ「ポケットマルシェ」をスタートさせ、一次産業再生に向けた新たなムーブメントを仕掛けている。

出会いと原体験が生んだ「東北食べる通信」

本間さんが「東北食べる通信」の創業に携わった経緯を教えてください

本間さんが「東北食べる通信」の創業に携わった経緯を教えてください

(本間氏)「東北食べる通信」の創設者であり、編集長でもある高橋博之に出会ったことです。

2011年に東日本大震災が起き、都市から多くの人が被災地に駆けつけましたが、自分もその一人でした。そこで、被災されても前を向いて活動をしている人たちと出会い、東北復興関係者のための業界紙「東北復興新聞」を発行し、被災地の情報を伝えていました。

そうしたなか、高橋に出会い、彼が話す“つくる人と食べる人をつなぐ”というメッセージやヴィジョンに説得力を感じたのが経緯です。

そして、それをカタチにするために話し合っていくなかで「東北食べる通信」というビジネスモデルが浮き上がってきました。

「東北食べる通信」のビジネスモデルが浮き上がってきたきっかけはなんでしょうか。

(本間氏)復興現場では被災者である沿岸の漁師と都会から来たボランティアの人たちの出会いがありました。まさに、つくる人と食べる人の出会いです。その出会いによって関係性が生まれ、都会の消費者も生産現場に主体的に参加していったんです。これは変革ですよね。

こうした変革を目の前で見て、この先には未来があると直感的に信じることができました。

金銭的価値の交換を越える“つながる体験”

高橋さんのヴィジョンと復興現場での原体験によって「東北食べる通信」は生まれたのですね。その「東北食べる通信」に関わる人たちが得られる価値とはなんでしょうか。

高橋さんのヴィジョンと復興現場での原体験によって「東北食べる通信」は生まれたのですね。その「東北食べる通信」に関わる人たちが得られる価値とはなんでしょうか。

(本間氏)“つながる体験”ができるといったことが大きな価値になります。

実は、生産者の多くは消費者とつながる機会がほとんどありません。名前ぐらいは知っていたかもしれませんが、その人がどういう顔で、どうやって食べているかを知る人は少なかった。これは消費者も同じです。食卓にならぶ食べ物を誰がつくっているかまで知っている人って少ないですよね。

「食べる通信」では、生産者の情報と彼らが収穫した食べものがセットになって定期的に届きます。さらには、Facebookでの発信やイベントによって生産者と消費者の交流が生まれていきます。

こうした“つながる体験”によって、消費者は食べ物の背景にある生産者のことを知り、そして生産者は自分のつくっている価値を再認識できる。これは“食べる”を金銭的価値の交換で終わらせるのではなく、自己肯定感やプライドを手にすることのできる大きな価値となります。

社会的インパクトの拡張のための「ポケットマルシェ」

「食べる通信」の成功体験を経て、2016年に開設した「ポケットマルシェ」の立ち上げに至る経緯を教えてください。

「食べる通信」の成功体験を経て、2016年に開設した「ポケットマルシェ」の立ち上げに至る経緯を教えてください。

「食べる通信」の成功体験を経て、2016年に開設した「ポケットマルシェ」の立ち上げに至る経緯を教えてください。

(本間氏)「食べる通信」を通して、つくる人と食べる人を情報でつなぎ、現地に行く消費者が増え、生産者も自分で立ち上がるという変化が起きたことは、僕たちにとって大きな成功体験でした。そして、この成功体験の社会的インパクトをもっと広げていきたいと思いました。

ただ、広げていくためには「食べる通信」というモデルはどうしても効率的ではありません。誌面をつくることは時間を要し、毎月頑張って生産者を取り上げたとしても年に12人程度を取り上げることが限界です。

インパクトを広げていくためには、自分たち仲介者が情報を伝えていくモデルではなく、同じ価値をダイレクトにつなげるプラットフォームがあれば広げていくことができるんじゃないかと考えました。それがスマホアプリという手段でした。

「ポケットマルシェ」の強みを教えてください。

(本間氏)現在、食品を扱うECは多くあります。ただ、そこに参加できなかった、またはそこに参加したくなかった生産者は多くいるのも事実でした。「ポケットマルシェ」ではこのような生産者が手間なく参加できる仕組みが重要になってきます。

そのため、生産者はスマホから数分で出品でき、売れた分の伝票が自動的に届くという、生産者の手間を省くシステムを構築する必要があり、それが「ポケットマルシェ」の強みになってきます。

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PROFILE

本間勇輝(株式会社ポケットマルシェ 取締役COO)

富士通(株)入社の後、(株)ロケーションバリューの創業に携わる。2006年取締役COO就任。2009年退社後(同社は2011年ドコモに売却)。その後、NPO法人HUGを創業し『東北復興新聞』創刊。2013年には NPO法人東北開墾を立ち上げ『東北食べる通信』を発行、「その後日本食べる 通信リーグを設立し、同モデルを全国に展開。2016年オンラインマルシェ「ポケットマルシェ」取締役に就任。
著書に『ソーシャルトラベル』『3YEARS 』。『東北食べる通信 』はGOOD DESIGN AWARD 2014の金賞を獲得。


東北食べる通信(http://taberu.me/tohoku/)
ポケットマルシェ(http://pocket-marche.com/)

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