TOKYO2020最前線のストプラが実践する戦略的思考
“真の課題”設定とインサイト発見のポイント
「真の課題はクライアント自身が不明確なこともあります。人によってはそれを見つけたらストプラの仕事は半分終わったようなもの、と言うくらい重要な部分ですが、見つける上での必勝法はありません。問題点、ターゲット、企業・商品の強み、市場環境、社会、時代感など、様々な要素を行き来しながら『これなのでは?』というものを導き出して設定します。強いて言うと、“プロ”の生活者になるという意識を持つと良いかもしれません。結局自分たちがコミュニケーションで伝える相手は一般の生活者。それほど深く考えながら生活している人はいないですが、自分が生活していている中で思うことがあるのと同じように、生活者はどう思っているのかということを普段の生活の中から意識してみることによって、お題が来た時に感覚・センスとして、どうすれば人々が動くのかということにある程度気づけるようになってくると思います」。
広告会社では営業がクライアントの代弁者、メディア担当が媒体の代弁者であり、ストプラは言うなれば生活者の代弁者(=プロの生活者)。“生活者はこう考えている”ということを、感覚的な話だけではなく市場分析やデータから生活者のインサイトを読み解いて戦略に繋げ、アウトプットをしていくことが求められる。では、真の課題が定まったらどのようにインサイトを捉えていくのか。
「インサイトとは生活者の心の奥にある欲望・深層心理です。それを発見するためのヒントの一つに“仮説力”と“疑問力”があると思います。『仮説』を持つことはすべてのプランニングのスタート地点。データの積み重ねからは何も生まれないので、プロの生活者の視点に立った時に、生活者の考えていることや、どうすればうまくいきそうかという仮説を考えてみることが大切です。それができたら説得性を高めるために、それに合った市場分析やデータを探してみる。また“疑問力”は“なぜそうなのか?”と問い続け、深掘りすることで深層心理に近づいていくことができます」。
他にも“この人は『本当は/実は○○○○したい!と強く思っている』”ということを考えるという方法も紹介してくれたが、大前提としてインサイトを発見するためにまずは大きく以下の3つを意識してみると良いそうだ。
●インサイト発見の3つのポイント
1)インサイトは「エクストリームユーザー」から発見する
→極端な人にヒントあり!(強い動機があるから)
インタビュー等でも一般的なユーザーよりもエクストリームユーザーに聞いてみると深層心理が出てきやすい
2)「商品・使用実態」<「社会・生活価値観」に考える視座を上げる
→商品のことばかり考えていると深層や共感を持ってもらえるところまで近づいていかない。クライアントはどうしても商品寄りの視点になってしまいがちなので、生活者寄りに視座を上げることによってより深層に近づいていく
3)「行動観察」からインサイトのヒントを見つける。人の「意識」は「行動」に現れる
→行き詰まったら外に出て世の中に生きている実際の人を見てどのように行動しているか、どういう動きをしているかを観察したり、何を考えているのかとかを思い浮かべてみる
この後、身近な既存商品を例にとってそれぞれの商品がユーザーのどのようなインサイトをついているのかを分かりやすく解説。ここまでのお話をより深く理解することができた。
メッセージで大事なのは“うまく言おうとしない”こと
続いてはインサイトを踏まえたメッセージ/ソリューション開発について。
「インサイトを踏まえて、それならこう言えば/こうやれば人は動く、と考えて発信する『○○○しよう!』というものがメッセージでありソリューションになります。広告メッセージとは、人の気持ちや行動、世の中、市場を変える・動かす『提案・呼びかけ・主張」だと思っています」。
そう言って中北さんはインサイトを起点にしたメッセージ例を大きく3つに分けて紹介してくれた。
❶生活者・ヒューマンインサイト起点
人の根底に流れている普遍的な気持ちや確からしい真実を捉えて
そこに気づきを与える・応援することで世の中を巻き込む大きな転換をつくるメッセージ
❷プロダクトカテゴリーインサイト起点
その商品やカテゴリーが持つ本質的な価値を捉えて
そこをまっすぐつく、もしくはひっくり返ることで大きな転換を図るメッセージ
❸社会・トレンドインサイト起点
社会的な動向や背景に対して、そこを先取りするかもしくは既に顕在化したムーブメントを捉えて大きな転換を図るメッセージ
「メッセージ開発をする際の心がけとしては“いいコトバで言おうとしない”“うまく言おうとしない”ことが大事です。まず文章にして考えてみて、その中で一番大事なところを一言にすることで本質を発見することができると思います。僕は普段からCM等を見る時に『これはどんな戦略から作られたんだろう?』と考えるようにしていますが、既存の広告やCMから、生活者のどのようなインサイトを捉えてどのようなメッセージを発信しているのかを考える習慣をつけることは、戦略的な思考を鍛える上で有効だと思いますね」。
TOKYO2020最前線のストプラが実践する戦略的思考
中北 隆盛
㈱電通 2020プロデュースセンター コミュニケーションストラテジスト/プランナー
2005年電通入社。マーケティング・戦略プランニングセクションにて14年間、営業セクションにてマーケティング業務に2年間従事。
マーケティング戦略、アクティベーション企画をはじめ、商品・サービス開発、企業・商品ブランディング、事業コンサルティング、都市開発等、幅広く戦略プランニングに携わる。 現在は2020プロデュースセンターに所属し、オリンピック・パラリンピック関連の戦略・企画業務をメインに担当。日本マーケティング協会(JMA)認定マーケティング・マスター。
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