ラグビーの“新しいファン”を生み出した丸の内15丁目PROJECT.の戦い方
ラグビーの新たな魅力に出会える街
だがWCのスポンサーにはなったものの、実際に何をやるのかが難しかったという高田さん。何せラグビー自体の人気が高くなく、大会が開催されることもコアなファン以外はあまり知らないような状況からのスタートだったからだ。
「そんな状況で、街でただ単にラグビーのイベントをやって本当に盛り上がるのか?と考えていて、仲間内で話をしていて生まれたのが『丸の内15丁目』というキーワードでした。15というのは15人制ラグビーから取っていて、街づくりにかけて15丁目。そこから、まだラグビーが好きでない人も含めて、触れた人がラグビーのことをほんのちょっと気にかけるようになることを目指して、“丸の内15丁目という架空の街から生まれるリアルな物語”というプロジェクトのベースができました」。
そんなプロジェクトのロゴマークはラグビーボールの形をしていながら15のブロックに分かれており、15丁目という街を示している。注目したいのは、ここにはラグビーの“ラ”の字も入っていないというところ。
「ラグビーと言ってしまった時点でコアファン以外のいわゆる“にわかファン”の人たちが入りづらくなってしまうと考えて、あえてラグビーの文字を入れないことにしました。でもテーマは『ラグビーの新たな魅力に出会える架空の街』。コアファンはもちろん、それまでラグビーを知らなかった人たちも色々な角度からラグビーの新たな魅力に触れてもらえるコンテンツを考えていきました。『ラグビーファンの“あったらいいな”が叶う場所』というテーマで、“15丁目に○○があったら“という大喜利形式で仲間たちとブレストをおこない、『行ったら絶対泣ける、超胸アツなラグビー映画が見られる映画館』や『WCの20国の出場国と開催12都市のご当地メニューが味わえるレストラン』など、たくさんアイデアを出した中からコンテンツを作っていきました」。
メインターゲットをあえて“にわかファン”に
「実際にプロジェクトを進めていく際にはより大きな広がりをつくるために、15丁目はあくまでプラットフォームとして位置づけ、三菱地所1社で取り組むのではなく色々な方と一緒に活動していく戦略をとっていきました。そうした時に力になったのが”楕円のご縁”でした」。
“楕円のご縁”とは、ラグビーの楕円球でつながった縁。ラグビーをテーマにした繋がりで、皆でラグビーWCを盛り上げていこうという想いを持つ人たちがたくさん集まった。自称・ラグビーの“にわかファン”を公言されていた糸井重里さんとの繋がりでほぼ日の「生活のたのしみ展」を丸の内に誘致して、その中でにわかファン向けのラグビーの施策を展開し、世界的指揮者の小澤征爾さん(成城学園中学でラグビー部に所属)との繋がりでは元ラガーマン・ラガーウーマンの一流アーティストたちによる「ART SCRUM」も開催。“楕円のご縁”によってさまざまな施策が展開されていった。
「こうした縁を繋ぎながら出てきたキーワードが“にわかが一番といえる場所”でした。にわかファンを増やすことがこのプロジェクトを通して我々が目指している大会の成功に繋がるんだと気づけた瞬間があり、そこからはとにかくにわかファンをどう増やしていくかということに焦点を当てて振り切った施策を展開していきました。『ボーダーうぇい!』もその一つで、普段は落ち着いた雰囲気で、なかなか思いきり盛り上がる雰囲気がつくりづらい丸の内でWCを通して街の熱狂を生みたいと考え、テーマを“COOLからCRAZYに”と設定。にわかファンも店舗も企業も、皆でラグビーのユニフォーム柄でもあるボーダーの服を着て応援しよう、というキャンペーンを打ち、また丸ビル周辺では、赤と白のボーダーでシティドレッシングを行い、丸の内をボーダーで染めることで一つになり盛り上がりました」。
その後9月20日の開幕戦からは日本代表の躍進もあって一気にラグビーブームブームが広がったが、こうした15丁目の取り組みによって丸の内も“にわかの発信地”として認知され、期間中もコアなファンからにわかファンまでたくさんの人が訪れる結果となった。
ラグビーの“新しいファン”を生み出した丸の内15丁目PROJECT.の戦い方
高田 晋作
三菱地所株式会社 広報部 ユニットリーダー 兼 ラグビーマーケティング室長
1978年1月27日生まれ。東京都出身。大学時代は、慶應義塾大学蹴球部(ラグビー部)創部100周年に主将としてチームの大学選手権優勝に貢献。2000年NHK入社後、2005年三菱地所へ転職。2018年に、ラグビーワールドカップ2019プロジェクトの立ち上げを行い、三菱地所がW杯オフィシャルスポンサーに就任。ラグビーの様々な魅力を丸の内エリアから発信する、街づくり×ラグビーのプロジェクト「丸の内15丁目PROJECT.」などを通して、日本大会を盛り上げた。
・CM「丸の内のラグビー熱」がギャラクシー賞受賞(2019年)
・「丸の内15丁目PROJECT.」がグッドデザイン賞受賞(2020年)
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