EVENT REPORT

May 2018

難民問題を考える

望むのは、それぞれの色を認められる世界

望むのは、それぞれの色を認められる世界

望むのは、それぞれの色を認められる世界

その後、会場から様々な質問が投げかけられたが、そのなかでも特に印象的だったやり取りがある。人種や宗教などの対立によって紛争が起こり、難民を生み出している事実があるが、思想や宗教が異なる様々な人が集まるWELgee内でも、必ずしもうまくいかないこともあるのではないか、その場合どのように対応しているのか、というものだった。

「すごく大事な質問だと思います」と答えた渡部さんは、続けてこう話した。

「宗教の違いに限らず、最近では迫害されて逃れてきたLGBTQの人もいるので、そこに対する考え方の違いも顕著な例です。私たちも試行錯誤ではありますが、『マイノリティの中のマイノリティをさらに弾圧するようなことはしたくない』ということを伝えるようにはしています。ただ、そうはいっても悪意なく、気づかずにそういう発言をしてしまう人もいます。そんな時も私たちは丁寧に向き合うようにしていて、たとえば『私があの子のお母さんだったらさっきのあなたの言ったことはとても悲しい』と伝えたりします。すると『なんで?』と返してくれることもあって、それによって小さなディスカッションが生まれるので、それを大事にして繰り返すようにしています。こうしたディスカッションを起こしていくことが健全だと思うんです。」

渡部さん曰く、これは難民に限らず、日本社会においても言えることだという。日本人は空気を読むのが上手かったり、本音と建前の使い分けが上手だったりするため、なかなかディスカッションにならない。小さな衝突が生まれないため、異なる文化圏から来た人にとっては、相手が本当はどう思っているのかがわからないなと思う時があるのだそうだ。

「だから日本も宗教や政治の話でももっとディスカッションされる社会になったらいいなと思うし、それが単なるケンカにならないような世界をつくっていきたいなと思いますね」。

続いてAさん。

「すべての人が一緒である必要はないと思っています。私の友達も考え方や宗教や文化が違う人たちもたくさんいるけれど、それが自然なこと。私は、考え方が自分と違う人と友達になりたいなと思っています。それは自分とよく似た人と友達になるよりも、彼から学ぶことの方が断然多いからです。仲良くなって数年経ってから『え、君の宗教ってこれだったの?』と気づくこともあります」。

最後に渡部さんは、Aさんの想いに重ねるようにWELgeeの大切にしている考え方を話してくれた。

「冒頭の“カラフルなセカイをつくる”という言葉にも、まさにAさんの言ってくれたような想いが含まれています。カラフルというのは、それぞれの色があっていいという意味なんです。たくさんある色を混ぜて1つのミックスジュースにする必要はなくて、サラダボウルのように、トマトはトマトのまま、コーンはコーンのまま、レタスはレタスのまま、そんな風にそれぞれのカラーを持った異なる人たちが、同じ一つの世界の中にいられるという状態がステキだと思っています」。


<May.2018 鈴木 潤子(WAO事務局)>

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難民問題を考える

渡部清花

1991年、静岡県生まれ。東京大学大学院・総合文化研究科・国際社会科学専攻。人間の安全保障プログラム修士課程。大学時代はバングラデシュの紛争地にてNGOの駐在員。トビタテ!留学JAPAN1期生。バングラデシュ、国連開発計画(UNDP)元インターン。Makers University 1期生。NPO法人WELgeeを設立し、パワーを秘めた難民の若者たちが、自分で人生をデザインできる仕組みを構築している。2018年3月末にフランス・パリ市庁舎で開催されたグローバル・コンソーシアムINCO主催『Woman Entrepreneur of the Year Award 2018 (2018年女性起業家アワード)』でグランプリを受賞。

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