EVENT REPORT

May 2018

難民問題を考える

WELgeeの取り組み

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民族紛争や人種差別、宗教や思想的弾圧などによって迫害の恐怖を持ち、自身の命を守るため自国を離れざるを得なかった人たちを難民という。現在、このような理由で強制的に移住を強いられた人たちが世界で6,560万人、難民が2,250万人いるといわれている(2017年現在)。

「2017年、日本での難民申請者数は約2万人。そのうち政府が認定した認定難民の数は0.1%の約20人でした。この数字はOECD諸国と比べて低く、彼らは認定されない間、日本社会とは断絶され、孤独な日々を送っています。ある方は『爆弾は降ってこないけど、人間として生きている心地がしない』と言っていました」。

これはどういうことかというと、来日した難民申請者にとって唯一の希望の道は、難民認定が下りることのみ。難民認定されるまでの間は、6ヶ月のビザを更新し続けながら日本に滞在することになり、その間にも在留資格のはく奪や就労許可の喪失、収容される可能性とも隣り合わせだという。加えて、一度収容されると出所してからも仮放免という立場で、就労の許可も保険もなく、住むところも制限されてしまうと渡部さんは話す。

こうした現実と直面しながら、ユニークな難民の若者たちと一緒にWELgeeが作ってきたプロジェクトが“Talk with、Live with、Work with”だ。

① Talk with
“Not talk ABOUT refugee but talk WITH refugee.(難民について話すのではなく難民と話そう)”をコンセプトに、難民問題について話し合う月に一度の対話型セッションや自治体や企業への出張授業を開催。難民の人たちが受け入れられる素地づくりをおこなう。難民の方が生の声を伝えてくれることで、テレビの向こう側の話だったことが、目の前にいる人の家族や友人の身に降りかかっていることなのだと感じられるようになる。

② Live with
難民の方々が日本人の家庭に滞在するホームステイ事業を展開。彼らにとって「第二の家族」と呼べる存在を通じて日本社会への入り口をつくる。日本の家庭に送り出すまでのマッチングをおこない、これまで10都道県の20家族と共に実施。現在では50件以上の日本人家庭がホストファミリーに登録。また、2017年暮れにクラウドファンディングで集めた資金で千葉の空き家を購入し、DIYシェアハウスを準備中。自分たちが“愛のあるオーナー”になることで、信用問題で家が借りられないという難民の問題を解決していく。

③ Work with
安心して日本で暮らし、働くためには本当に0.1%の難民認定に入るしか道はないのか?という疑問から、愛する故郷で愛する家族が残っている状況のなかで、自分が自分として生きていく場所を見つけるために、難民の方が自分の経験やスキルを活かして働く手助けをおこなう。2017年は、2人が正社員雇用されたが、就労のためのより安定したビザに書き換えた上で安心して働くということを最終目標とし、現在はパートナーシップを結べそうな企業と共にトライアルをおこなっている。

想像力があれば、“テレビの向こう側の問題”ではなくなる

イベントにはWELgeeの活動に参加しているシリアからの難民、Aさん(男性)が参加してくれた。Aさんは、日本に辿り着くまでの経緯や、自身の身に起きたこと、現在の状況などのありのままを、時折、声を詰まらせながらも話してくれた。

そうした話を聞いたイベント参加者は“遠い国で起きている問題”から、 “今目の前にいる人に降りかかった現実”なのだと感じることができた様子だった。渡部さんもそれを感じ取ったのか、次のように語っていた。

「スマホやネットが普及して情報が昔よりも近くなっているはずなのに、私も含めて逆にそこに対する想像力が欠けてしまっている部分があるのかなと感じます。紛争地域で何百人もが空爆でなくなったニュースを見ても、遠い世界で起きている出来事だと感じたりとか。テレビの向こうで起こっている空爆を止めることは出来なくても、そこにいる人の家族や友達、繋がっている人が、もしかしたら近くにいるかもしれないって想像してみてください。これを機に難民問題に限らず、テレビで見たことやニュースで見たこと、目の前で起こったことが自分の友達だったら、Aさんだったらって想像できるようになる人が増えたらいいなと思います」。

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難民問題を考える

渡部清花

1991年、静岡県生まれ。東京大学大学院・総合文化研究科・国際社会科学専攻。人間の安全保障プログラム修士課程。大学時代はバングラデシュの紛争地にてNGOの駐在員。トビタテ!留学JAPAN1期生。バングラデシュ、国連開発計画(UNDP)元インターン。Makers University 1期生。NPO法人WELgeeを設立し、パワーを秘めた難民の若者たちが、自分で人生をデザインできる仕組みを構築している。2018年3月末にフランス・パリ市庁舎で開催されたグローバル・コンソーシアムINCO主催『Woman Entrepreneur of the Year Award 2018 (2018年女性起業家アワード)』でグランプリを受賞。

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