EVENT REPORT

Mar 2018

一億総メディア化時代における放送の未来とは

SNSの普及により、誰もが電波を使い情報発信できるいま、世界では「パブリックアクセス」という考え方が議論されているのはご存じだろうか。

今回のWAOでは、パブリックアクセスという視点において日本には大きな課題があると訴えるNPO法人「8bit News」の代表の堀潤さんをお招きし、パブリックアクセスとはなにか、そして、その重要性を考えるため、イベントを開催した。

パブリックアクセスとは

市民が公共の資源や財産にアクセスする権利を「パブリックアクセス」と呼ぶ。テレビやラジオ局が使用している電波についても公共の財産とされ、欧米や韓国などでは市民がテレビチャンネルなどのメディアを運営する権利が法律で保障されている。

日本でも「パブリックアクセス」の議論はおこなわれているが、まだ市民への浸透が十分でないと話すのはメディアでも活躍するキャスターの堀潤さん。堀さんが目指すパブリックアクセスとはどのようなものか。海外の事例も踏まえ、わかりやすく説明してくれた。

「たとえば、アメリカでは各地域にパブリックアクセス専門チャンネルというのがあり、市民が撮った映像をそこに持ち込むと、公共電波を使用して放送できる制度があります。ヨーロッパや韓国でもパブリックアクセスについては試行錯誤を重ねていて、イギリスであれば公共放送でもあるBBCが積極的に取り組んでいます。BBCでは実際に市民の映像を流すだけでなく、ディレクターやカメラマンを派遣し、市民との協業で映像を制作する取り組みもおこなってきました。僕はこうした海外の取り組みを学び、日本のメディアも限られた人たちの発信ではなく、市民との協業は必要であり、実現するべきと考えています」。

パブリックアクセスの実現に向けて

パブリックアクセスの実現に向けて

パブリックアクセスの実現に向けて

堀さんは自身でも“パブリックアクセス実現に向けた発信育成プロジェクト”として「8bitNews」というメディアを運営している。「8bitNews」は一般市民投稿型のニュースサイトであり、堀さんがNHK時代(2013年に退職)に仲間と立ち上げたNPO法人だ。

「テレビで流されるニュースは丸一日かけて取材した内容の殆どがカットされ、1分程度に編集し、放送されます。これは取材されている側も取材している側も本意ではなく、忸怩たる思いをもつことも度々ありました。そうした想いから、テレビという制限されたメディアから解消された仕組みを持つことができないだろうかと仲間たちと話し合い、立ち上げたのが『8bitNews』です」。

「8bitNews」への投稿はシンプルだ。自身が撮影した投稿動画のURLを送ると、その内容は事前に取材経験のある運営側でチェックし、事実関係の誤りや情報の偏りなどがなければ公開となる。また、判断に迷う内容はベテランのジャーナリストや学者、弁護士などの有識者が名を連ねるアドバイザリーボードのメンバーに相談し、公開やさらなる検証を投稿者に求めるという。その後、公開された動画の一部は、堀さんが出演するテレビや雑誌などでのマスメディアでも発信され、さらに多くの人たちに届けられていくのだ。


一方で、市民がメディアを扱うには情報発信におけるリテラシーがなければ記事を見てもらえなかったり、ときには炎上という事態を起こしかねないリスクが生じる。

こうした問題解決のため堀さんは、新聞社やWEBなどのメディアのプロたちの協力を得て、各地で情報リテラシー向上のためのワークショップまでもおこなっている。

「『8bitNews』の活動は、発信の場の提供だけでなく、取材や撮影、編集、制作といった発信に必要なスキル育成までもおこなっています。また、僕が出演するテレビ番組や連載を持つ出版物などでも『8bitNews』で取り上げたニュースを発信していくこともあります。市民とマスメディアの協業、ネットとテレビの協業など、僕たちの活動は協業のうえで成り立っています」。

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一億総メディア化時代における放送の未来とは

堀 潤

1977年、兵庫県生まれ。NPO法人「8bit News」代表。立教大学/文学部ドイツ文学科/卒業。2001年、アナウンサーとしてNHKに入局。岡山放送局、東京アナウンス室を経て、2013 年4月フリーに。現在は「モーニングCROSS」(TOKYOMX)キャスター、「JAM THE WORLD」(J-WAVE)ナビゲーターを務めるなどレギュラー多数、「毎日新聞」、雑誌「VERY」、「anan」他で連載を持つなど幅広く活動中。

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