獣害被害をビジネスに変える
ブームではなく、文化の定着
河合さんたちはこうした一連の取り組みを「ワイルドライフマネージメントプロジェクト」と名付け、活動をおこなっている。そして、現在では、「GIBER CAN」の他にジビエを使ったカレーの商品開発や、皮や角を使った新たな商品開発にも着手をはじめ、メディアにも取り上げられるようになってきた。
また、河合さんは地域の子どもたちに向けて、狩猟肉を使って料理をするワークショップもおこなっている。こうした活動の根底にあるのは、「ジビエをブームで終わらせずに文化として地域に根付かしていくためには、地域の活性化と次世代への浸透も大事」という想いがあるからという。
今後もさらに、「ワイルドライフマネージメントプロジェクト」や次世代教育などの活動を積極的におこなっていきたいと、河合さんは話す。
「シカは1年で約1.5倍、イノシシは1年で約8倍も増えるともいわれています。こうした現実を考えると、国や自治体からの補助金での活動は限界がきてしまいます。僕たちは、こうした課題を地域まかせにしないで、個人や企業としてのリソース活用し、解決策を模索していくことが大事だと考えています。そのため、僕らはいままでの活動で培ったノウハウは提供していくつもりです。もちろん、こうした行動によって企業としての競合相手は増えていきますが、それによって消費者が狩猟肉文化に接する機会が増え、需要が増えていくことで、サステナビリティも生まれていくと信じています」。
イベント終了後、参加者からは「自社の利益だけでなく、地域にも利益を還元できる仕組みが大事だと感じた」「自社の商品開発スキルや販路などのリソースが、地域のサステナビリティにいかに貢献できるかを考えるきっかけとなった」「企業だけではなく、自治体とも連携した包括的なプロジェクトの発展が必要になってくる」などの感想が多く寄せられた。
<Dec.2016 小出 伸作(WAO事務局)>
獣害被害をビジネスに変える
河合祥太
株式会社アクタス 飲食開発責任者(レストランSOHOLM運営責任者)。大手外食チェーンのエリアマネージャーを経て、2014年にアクタスが飲食事業部を立ち上げる際に入社。現在はアクタスが運営する東京・天王洲のレストラン「SOHOLM」の運営をはじめ、地方と共同でつくるジビエの缶詰や、スモークオイルの開発など、他にない商品を企画する。日本各地の食の産地を飛び回り、地方創生や食文化の発掘、開拓にも積極的に取り組む。
SOHOLM(http://www.soholm.jp)
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