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Jun 2020

純粋な好奇心が発明の原動力

高橋 鴻介( 発明家/株式会社電通 コミュニケーション・デザイナー )

デザインすることは未来をつくること

コミュニケーションがテーマになったことには、もともと高橋さんの中で人と人とのつながりが大事であったとか、何か理由があったのですか?

コミュニケーションがテーマになったことには、もともと高橋さんの中で人と人とのつながりが大事であったとか、何か理由があったのですか?

多少なりとも僕が人見知りというのも関係しているのかなと思います。“もの”があると、それが話の種になって話しやすくなったり、つながるきっかけになるんですよね。だからちょっとしたことでコミュニケーションが生まれるものや仕組みにはすごく共感します。たとえば昨年訪れたアムステルダムにあるロイドホテル*もその一つです。1~5つ星の部屋を同じ建物の中に同居させるで、学生やビジネスマン、地元の若者から富裕層など、普通では考えられないような顔ぶれがラウンジに集まるんです。その光景を見て、自分のつくっているものとすごく近い思想を感じました。

*写真はロイドホテルHPより引用 https://www.lloyd.nl/

高橋さんがコミュニケーションやつながりをつくりたいと思うのは、人と人とが繋がった先に何があると思うからでしょうか。

自分と異なる性質を持つ人と出会って話をすると世界が広がると思うんですよね。“あ、そういう考え方があるんだ”とか。僕自身、視覚障がいの方と友達になって、彼らが待ち合わせの時にマンホールの数や坂の勾配、匂いや音を頼りに目的地に行くという話を聞いて驚きましたし、視点が増えました。僕とは違う見方で世界を見ている人たちがいて、その事実だけですごく素敵だなと。そうやって自分の知らなかったことに気づくと、もっと世界が広がると思うんです。

たしかにそうですね。高橋さんの発明への原動力はどこから来るのでしょうか。

自分の好きなものや良いと思っていることを、人に伝えたいとか、どういう伝え方をしたら素敵なものだとわかってもらえるかとか、すごく個人的な欲求がベースになっていると思います。僕は新しいものが好きですし、新しい発見を人に話してびっくりしてほしい。きっと“発見”が好きなんですよね。でも発見だけだと何も変わらないので、それをプロダクトとしてデザインする。その上で、せっかくなら世の中や社会を少し良くすることに寄与できて、世の中に認められて広がっていくものであってほしいというのは一デザイナーの欲求としてある気がします。そういう意味では、僕はプロダクト自体をつくりたいというよりは、自分が発見した世界の見方がすごく素敵な状態で存在している未来までをつくりたいと思っているんですよね。その未来をちゃんと体験できるような状態にするためにモノづくりをしているので、自分の中で“こうなっていたらいいな”という未来が一枚絵やプロトタイプとして描けると、プロジェクトとしてもちゃんと推進していく気がしますね。

ADVISE

自分の好奇心を大事に

純粋な好奇心が発明の原動力

最後に、新しいことを生み出す上で高橋さんが大切だと思うことは何か伺ってみた。
「すごくありきたりかもしれないですが“好奇心”ですね。好奇心って何に興味を持つかっていうフィルターのようなもので、同じ環境で育っていても同じ場所にいても一人一人違う、すごくオリジナルなもの。でも普段仕事をしていると、だんだんと他人のフィルター越しに物事を見るようになりがちです。なので新しいことを考える時は、あえて自分の好奇心のままに進んでみる。そうすると、実際役立つかどうかは別として“そういえば今までこれ無かったな”っていうアイデアがたくさん出てくると思います」。

実際、高橋さんも発明の際は『自分は正しい』と思ってみることを大事にしているという。世間的に正しいかどうかは置いておいて、自分が抱いた好奇心は自分にとっては絶対的真であることに変わりないからだそうだ。

「僕は、世の中がちょっと前に進むためには、突然変異みたいなものが必要なんだろうなと思っています。最近、人々が日々触れているものといえばFacebook、インスタグラム、ツイッター、スナップチャットとか、だんだん同じものに収束してきていて、世の中がちょっと停滞しているように感じています。でも、だからこそ今のタイミングで何かが劇的に変わるかもしれないですし、現在進行形で変化している部分もある。自分が面白いと思うことをやり続けて突然変異みたいなものをつくっていくことで、人生が楽しくなったり、それが世の中の主流になったら面白い。僕もそういう実験のような気持ちで、これからも色々やっていきたいと思います」。

そう語る高橋さんの表情は、実に生き生きとして楽しそうだ。いったい今日は、明日は、その次の日は・・・彼はどんな発明をするのだろうか。彼の好奇心と独自の発想から生まれた新たな発明が、ブレイルノイエのように社会に実装され、世の中の当たり前になる日が来るのが楽しみだ。


<May.2020 鈴木 潤子(WAO事務局)>

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PROFILE

高橋 鴻介(発明家/株式会社電通 コミュニケーション・デザイナー )

1993年12月9日、東京生まれ秋葉原育ち。慶應義塾大学 環境情報学部卒。卒業後は広告代理店で、インタラクティブコンテンツの制作や公共施設のサイン計画などを手掛けつつ、発明家としても活動中。墨字と点字を重ね合わせた書体「Braille Neue」、触手話をベースにしたユニバーサルなコミュニケーションゲーム「LINKAGE」など、発明を通じた新規領域開拓がライフワーク。主な受賞歴にWIRED Audi INNOVATION AWARD、INDEX: Design Award、TOKYO MIDTOWN AWARDなど。

*外部リンク:
『マスナビ』取材記事 https://www.massnavi.com/people/1006.html


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