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Feb 2017

社会課題をビジネスで解決する

町井則雄( 株式会社シンカ  代表取締役社長 )

教育が与える影響とは具体的にどういったことでしょうか

(町井氏)私たちが学校でうけてきた一つの回答を求めていく教育は、最適解に対し、いかに最短距離で辿り着けるかを学ぶ教育です。

歴史の授業で例えると、その事柄が起きた年号を答えればマルをもらえますが、イマジネーションに必要なのは、年号を答えることではなく、なぜそれが起こったのかを考えることです。年号の暗記では思考の訓練にはならずイマジネーションは生まれません。

いままでの労働集約型ビジネスの社会ではこのような教育でも十分だったかもしれません。しかし、AIなどが発達してきた世の中では答えが一つの仕事は機械ができてしまうので、人間に求められる仕事の内容が変わってきています。

それでは、そのような教育をうけてきた社会人はどうしていけばいいのでしょうか

それでは、そのような教育をうけてきた社会人はどうしていけばいいのでしょうか

(町井氏)社会のなかで身につけていくしかありません。

そのために必要なことは、小さくてもいいので自分で「これをやった」という達成感を得られる体験を重ねていくことです。

それは営業・企画・開発・マネジメントと分断されていく仕事のなかでの達成感ではなく、自分が考えた事業やプロジェクトに最初から最後まで関わっていき、カタチになって社会にリリースされていくまでの体験によって得られる達成感です。

こうした体験は、プロセスのなかでイマジネーションが必ず必要となります。たとえ失敗したとしても、なぜ失敗したのかを考えることが大事で、そこからイノベーションが生まれてきた事例はいくつもあります。実際に、個人が全てに携わっていくスタートアップ企業には、イマジネーション豊かな方が多いですよね。

また、社会課題の構造の変化とともに、テクノロジーの変革も起きています。テクノロジーが社会課題の解決に与える影響をどのように考えていますか。

また、社会課題の構造の変化とともに、テクノロジーの変革も起きています。テクノロジーが社会課題の解決に与える影響をどのように考えていますか。

(町井氏)エジソンは発明家として知られていますが、海外ではビジネス家としても有名なのをご存じですか。エジソンは電球を発明した人ではありません。電気会社をつくって電球というテクノロジーをスケールさせていった人です。エジソンは発明の天才と言われていますが、僕はエジソンのことをスケールさせていく天才だったと思っています。

これからの20年を考えたとき、社会課題の解決の核はテクノロジーになっていくでしょう。テクノロジーとそれに付帯する様々なサービスとプロダクトが社会課題の解決に結びつくのは間違いありません。

ただ、テクノロジーが社会を変えていくのではなく、エジソンのように、テクノロジーをスケールさせ、持続的なビジネスモデルに変えていくことが重要だと考えています。

そして、その役割の多くはビジネスが担っているからこそ、「社会課題をビジネスで解決していく」という考えは重要になってくると思っています。

ADVISE

社会課題解決型ビジネス創出に向けた町井さんからのメッセージ

3次元思考のワークスタイルへの変革

社会課題をビジネスで解決する
社会課題をビジネスで解決する

町井さんは社会課題型ビジネス創出に向けて、まずはワークスタイルの変革が大事だという。【依頼に応えるモデル】から【期待を高めるモデル】といったワークスタイルのシフトによって、ビジネス創出の機会が高まっていくと教えてくれた。

「他者からの“依頼”、“要望”、“指示”、“予想”のなかでおこなう仕事のことを『2次元思考』のワークスタイルと呼びます。このワークスタイルだと創造領域は狭く、依頼に応えていくだけでは付加価値も生まれてきません。そうした、思考から脱却していくためには『3次元思考』のワークスタイルを意識して働く必要があります」。

「3次元思考」とは従来の2次元思考に自分の主体的な意思を持つことだ。現在、与えられている仕事に対して「こうしたらどうだろう」という自発的なイマジネーションを持つだけで思考空間が立体的になり、創造領域が広がっていくと町井さんはいう。

「この『3次元思考』を持つことで、視点が多観点化されていきます。そして、“依頼”が“期待”に変わり、“指示”が“共感”に変わり、“要望”が“希望”に変わり、 “予想”が“可能性”に変わっていきます。可能性を創り出しカタチにすることがビジネス創出には大事なんです」。

<Feb.2017 小出 伸作(WAO事務局)>

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PROFILE

町井則雄(株式会社シンカ 代表取締役社長)

前職の日本財団ではCSR企画推進のチームリーダとして、「日本財団公益コミュニティサイト『CANPAN(カンパン)』」の企画・開発や企業との連携による社会課題の解決に向けた事業づくりを担当。2016年、持続可能な社会づくりに向けたイノベーション事業をプローデュースするシンカを設立。


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