EVENT REPORT

Aug 2021

“本当に戦えるリーダー”になるには

ビジネス環境の変化と改善型/改革型経営の混在

ビジネス環境の変化と改善型/改革型経営の混在

「この数十年のフルグローバル化やIT・デジタル化によってこれまでの産業構造は大きく変わり、現在の事業環境の中には改革型と改善型という領域が混在しています。“改善”はゴールが明確で、How(どうやって)という答えを導き出せば良いので、日本企業の特徴であるボトムアップ型やすり合わせ型と非常に相性が良い。ところが“改革”はWhat(何をしなければならないのか)という問いを自分たちで考え、やるかやらないかの選択を行わなければならず、これまで改善型で進んできた日本企業は答えに窮することが多い領域です」。

近年話題となった『両利きの経営』も既存事業をより良くしていく改善的なアプローチと、新規事業・イノベーションを起こしていく改革的なアプロ―チを両立させていくことが重要だが、それができない日本企業が多いとも木村さんは言う。

「既存事業をやりながら新規事業を始めるということは、競争力を失った事業は新しい事業に転換し、適性適切なタイミングで負荷の少ない構造改革を行いながら新陳代謝を起こしていくことが必要です。ただこれを実現する過程で人材や組織、経営インフラといった機能面で必ず不整合が生まれます。結果、収益性の下がってきた事業は構造転換ができないまま滞留し、それによって利益率の高い事業があっても企業全体の利益率が下がってしまうのです。そうならないために大切なのは①事業・組織・人材が一体となって適時適切に経営の形をトランスフォームしていくこと、②“まだいける”“できれば残したい”といった心理を排除し、競争力の下がってきた事業への対処法を冷徹に見極め、選択することです」。

事業ポートフォリオの入れ替えがなかなか進まないのには別の理由もある。ある程度規模のある会社の経営トップになると、すべての事業本部の下にある細かい事業状況の詳細を一次情報として把握し、自分の判断だけでYES/NOをつけられることはまずなく、現場の事業責任者が持ってくる二次情報をベースに判断するしかないとい。

「事業の競争力が徐々に落ちてきた時、本当に行わなければいけないのは先ほどお話した抜本的な事業構造改革ですが、それは固定費を削減する事が不可避なので、非常にハードルが高い。多くの事業責任者はトップには計画数字を積み、『大丈夫です、がんばります』と報告をして承認をもらい、現場は文字通り必死にがんばる。けれど本質的な解決はされていないので数年持ちこたえてもまた徐々に競争力を失っていく。これではだめです。皆さんが『大丈夫です、がんばります』というファイティング・ポーズを崩さない限り、経営トップは当該事業の状況を正しく知り、判断することは難しい。逆に言えば、皆さんがどのような情報を上げるかによって、その上の判断が大きく変わってくるのです」。

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“本当に戦えるリーダー”になるには

木村 尚敬

㈱経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー) マネージングディレクター

ベンチャー企業経営の後、日本NCR、タワーズペリン、ADLにおいて事業戦略策定や経営管理体制の構築等の案件に従事。IGPI参画後は、製造業を中心に全社経営改革(事業再編・中長期戦略・管理体制整備・財務戦略等)や事業強化(成長戦略・新規事業開発・M&A等)など、様々なステージにおける戦略策定と実行支援を推進。
IGPI上海董事長兼総経理、モルテン社外取締役、りらいあコミュニケーションズ社外取締役
Japan Times ESG推進コンソーシアム アドバイザリーボード
慶應義塾大学経済学部卒、レスター大学修士(MBA)、ランカスター大学修士(MS in Finance)、ハーバードビジネススクール(AMP)

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