起業家支援だけではなく、大企業の新事業創出支援もおこなっている山口さんに、企業のなかでの新事業創出に必要なことを聞くと「新事業においての『時間軸』のイメージ持つこと」だと話す。
「たとえば、“1年以内に100億円を生み出す新事業を創る”というのは企業の戦略においては非効率。もし、100億円という規模を1年以内の時間軸で生み出すことが目的なら、既存事業内から洗い直し、その事業で100億円を目指した方がいいでしょう。新事業においては、新事業の時間軸をイメージできないと成功はしません」。
そして、新事業の時間軸をイメージするのは、組織ではなく、新事業を創りあげていく本人がおこない、組織にコミットしていかなければ意味がないと山口さんは話す。そこで重要な要素となってくるのが、組織のなかでの「期待値コントロール」だという。
「監督に“ホームラン打ちます”と言って打席に立つと、周りの期待値って上がってしまいますよね。そこを、ホームランではなく、“塁には出ます”程度にして、周りの期待値をコントロールすることで、あまり自分が背負わずに打席に立つ。企業での新事業については、こういった『期待値コントロール』できる人が持った時間軸の方がうまく進んでいます」。
新事業は1打席のチャンスでホームランを打つことは難しい。そのため、周りの期待値を自身でコントロールし、事業の規模に合わせた時間軸を自分でイメージしていくべきだという。しかしながら、その時間軸のなかでのマイルストーンは必ず持ち、そこにはエクセルでつくれる定量的なKPIだけでは足りないという。
「エクセルの数字は仮説に次ぐ仮説のため、検証がされていない場合が多く、非常に危険です。それよりも、お客さんと話して得られる共感と納得感の方が大事。何社もお客さんを回り、さらには提案の手法を変えていくことで見られるお客さんの変化の積み上げで生まれる実績をもとに仮説を立て、具体的な改良や改善策につなげていく。こういった行動もマイルストーンの指標として取り入れていくことが重要です」。
インタビューのなか、山口さんは幾度も「改良改善」という言葉を口にした。
「『改良改善』に向けた行動は、より良い未来を創造することであり、そこに事業の価値があると信じています」と、山口さんは話す。
<Dec.2017 小出 伸作(WAO事務局)>