EVENT REPORT

Jul 2018

台湾で人気No1の訪日観光情報メディア創設者が語る
~台湾のいま~

濃厚なカルピスと水っぽいカルピスの違い

“台湾で最もFacebookファン数の多い日本人”と呼ばれるほどあって、吉田さんのFacebookでの情報拡散力は絶大である。そして、メディア事業をしていく上で、このFacebookなどのSNSは重要なツールとなるが、その効果は国によって違うという。

「これは、とある香港人の経営者の友達が言っていたんですけど」と前置きして、吉田さんは次の質問を会場に投げかけた。

「中国人100万人、台湾100万人、香港人100万人。これがSNSのフォロワーだとしたとき、効果の違いが分かりますか? 」

吉田さんは商品購買力、訪日観光客数、Facebookの利用者特性の3つの観点からの違いを説明してくれた。

まず、1人当たりのGDP(USドル)で購買力を比較すると、台湾人の25,000ドルに対して中国は平均でみると8,000ドルほど。消費力の差は歴然だ。台湾の場合は中間層が十分に育っているため、実際の購買に至るチャンスが中国とは全く違うというわけだ。

また、訪日観光客を比較すると、2017年は中国の訪日観光客数(約735万人)が台湾の訪日観光客数(約456万人)を上回っているが、人口に対しての割合で比べてみると圧倒的に台湾人の方が日本に来ていることが分かる。

さらに、台湾はFacebookの利用率(対人口)が世界1位。日本の場合はTwitter、Facebookなど様々なSNSがあるが、台湾に関してはFacebookが一強という状況だという。現在、日本では、Facebook離れが進んできたといわれているが、いまだ台湾ではFacebookがインフラとして定着しており、停電・断水が起こるよりFacebookが無いと困ると言われる状況だという。そして、台湾人は能動的で、記事についての“いいね”や“シェア”を頻繁におこなうため、情報が二次的・三次的に波及しやすいのだという。

「中国で訪日促進のデジタルマーケティングをしたところで日本に来る人は中国人全体の1%にも満たない。カルピスでいうと、水が多く薄い味のカルピスです。それが台湾だと日本に来てくれて、商品を買ってくれて、さらに拡散してくれる。すごく濃厚な、ほぼ原液みたいな甘いカルピスに変わるんです。そういったことから、私たちは情報の拡散効果がある台湾にフォーカスしています」。

台湾の消費者特性を掴む

台湾の消費者特性を掴む

台湾の消費者特性を掴む

訪日台湾人の訪日リピート率は、なんと8割もある。一方で、訪日台湾人は、定番観光地には飽きている方が多く、いまはあまり知られていない田舎に関心が高くなっているという。

このように訪日台湾人の傾向を長年、観察している吉田さんは、訪日台湾人を “アッパー層”、“アッパーミドル層”、“カジュアルミドル層”、“ミドル層”と、所得や職種などの属性をもとに4つの層に分類している。

なかでも、「ラーチーゴー!日本」が重視している層が“カジュアルミドル層”だ。カジュアルミドル層の大きな特徴は

・ネット上の声が大きく、能動的にシェアしてくれる
・行列に並ぶのをいとわない

ということ。特に台湾人の行列好きは日本人の想像の及ばぬところだという吉田さん。

「僕の友達が『なにかの行列があるからとりあえず並ぼう』って言って1時間ほど並んで、結局自分の番が来たときに初めて商品を見て、『僕要らないです』って言ったんです。なにに並んでいるかわからないまま並んでいたなんて信じがたいですよね」。

こうしたターゲットの特性を掴み、「ラーチーゴー!日本」ではデジタルマーケティングを展開し、効果を発揮しているのだ。

1

2

3

台湾で人気No1の訪日観光情報メディア創設者が語る
~台湾のいま~

吉田皓一

株式会社ジーリーメディアグループ代表。 奈良県出身。防衛大学校を経て慶應義塾大学経済学部卒業後、朝日放送入社。 総合ビジネス局にてテレビ CM の企画・セールスを担当したのち退職。2013 年㈱ジーリーメディアグループ創業。台湾人香港人に特化した日本観光情報サイト「樂吃購(ラーチーゴー)!日本」(2015年 日経優秀製品サービス賞 最優秀賞受賞)を運営する。中国語に堪能(漢語水平考試最高級所持)なことから、「台湾で最もFacebookファン数の多い日本人」として台湾にてテレビ番組やCM出演、雑誌コラムの執筆なども行う。日本国内においても、台湾香港インバウンド関連のセミナーに多数登壇。現在は東京と台北を往復しながら、日本の魅力の発信につとめている。

OTHER ARTICLE

このカテゴリの他の記事

~ビジネスが未来の社会に与える影響をカードゲームで体感~
持続可能なビジネスの在り方を考える

REPORT

~ビジネスが未来の社会に与える影響をカードゲームで体感~ 持続可能なビジネスの在り方を考える

獣害被害をビジネスに変える

REPORT

獣害被害をビジネスに変える

すべてにおいて、美しいデザイン

REPORT

すべてにおいて、美しいデザイン