PROJECTS

Nov 2017

富士フイルム×凸版印刷 共創プロジェクト「cyan」

2025年に起こりうる社会課題とその解決策を考えていくために、富士フイルム株式会社と、凸版印刷株式会社の技術者が集まり、未来洞察の考え方をベースに討議する半年間のプロジェクトを実施。

株式会社ビオトープ 小林氏のファシリテーションを受けながら、参加メンバーは「健康・ライフサイエンス」、「食料資源・エネルギー」、「都市・モビリティ」の 3つのテーマについて、熱い議論を戦わせた。小林氏からのコメントを交えてプロジェクト概要を紹介する。

既存の取り組みにとらわれないマインドとディスカッション

既存の取り組みにとらわれないマインドとディスカッション

今回の参加者は社内で選抜された研究所の技術者がメイン。競合する事業分野もある両社にとって、既存のリソースだけを組み合わせて議論をしても、なかなか先に進まない。0から1を生み出すために、これから生じる新しい課題に対して、未来志向で両社が一緒に取り組むことができるか、プロジェクトをおこなう上で、この視点を大切にした。

ファシリテーターの小林氏は、「今回は未来洞察を起点に、両者の持つ技術や資産の視点転換を仕掛けたプロジェクトでした。参加者にとって未来洞察自体が新しい体験で、これまでにない新しい視点のコンセプトが出てきたのではないかと思います」と、プロジェクトを振り返る。

社会課題への自分の想いを語れる雰囲気作り

社会課題への自分の想いを語れる雰囲気作り

企業のプロジェクトはどうしても所属組織のことを考えてしまうが、今回重要視したのは参加メンバーの想いだ。自由に自分の想いを語りつつ、多様な意見を受け入れる。これを両立させるために重要なのが「探索型のマインドセット」。無理やり落としどころを作らずに、多様な意見を受けながら常に探索し続け、純粋に未来のことを考え抜く姿勢を、メンバーは貫いた。

研究者はその場で反射的に出てきた意見で創発するよりも、まず自分でじっくり考えたいと思う人が多い。そのため、特に今回はチーム議論で意見が丸まらないように、プロジェクトの途中で、共創だけではなく独創の比重を高めるようにプロセス設計を見直したりする工夫もおこなった。

多様性からもたらされる新たな視点

多様性からもたらされる新たな視点

多様性からもたらされる新たな視点

チーム分けは、メンバーの希望するテーマ、個々の経歴を加味することに加えて、技術者・研究者以外の社員や外部の学生に討議に加わってもらい、多様な意見が交わることを促した。参加メンバーがあえて前提を知らないゲストに経緯を噛み砕いて話すことで、新たな視点や、これまでの議論の本質に気付いたりすることも見受けられた。

この他にも、メンバーは外部の専門家や生活者へのインタビューをおこない、多様な意見を聞いた。特に印象的だったのがビオトープの外部パートナーでもある、歴史学者の三石晃生氏。新しい技術が生活者に受け入れられていく背景には文化的、歴史的文脈が欠かせず、歴史に学ぶと予想できる未来も多いという。三石氏の幅広い知見と話術に各チーム大いに刺激を受けていた。「歴史学者からテクノロジーの話を聞く」、この発想自体も多様な視点を取り入れた一例である。

「未来洞察のワークでは、『未来の住人になったような気分だった』という声も聞くことができました。目の前の技術課題を解決するだけでなく、自分の研究がどのように社会に繋がっていくのかを意識し、自分が未来の担い手になっていくためのマインドセットの転換は、実は今回のプロジェクトの裏テーマでもありました」と小林氏は語る。

プロジェクトを振り返って ~ファシリテーターの立場から~

プロジェクトを振り返って ~ファシリテーターの立場から~

プロジェクトを振り返って ~ファシリテーターの立場から~

-共創プロジェクトの運営側に求められることは?

「プロジェクトを仕掛ける側が他人事にしないこと。そして、共創型の場で現れてきた集合知を少人数でがっと統合するプロセスを組み込むことです。また、組織の観点から言うと、新しいことに取り組みたいと思うタイミングは個人により異なるので、適切な人が必要なタイミングで挑戦していける機会を用意しておくことが重要になります」。

-今後このような取組みに期待することは?

「今回のプロジェクトを通して、今後に可能性を感じたのは、『本当にやりたいテーマを見つける』ということを運営側が大切にしていた点です。個人の想い、やりたいテーマは、最初の時点では企業視点の合理性はないです。だからこそ企業にとっては異質でありゆらぎであり、企業視点では生まれないテーマでもあります。そうした自律性を取り込んでいく余白を持つことが、これからの先行き不透明な時代に重要と考えて進めてほしいと思います」。

発表会後の懇親会でも白熱した議論が続き、各チームで議論を継続していくという。最終発表までの間にアイデア検証のための行動をして、方向転換をしたという話を何人かのメンバーが語った。探察型のマインドセットが育まれているのを感じるとともに、是非このプロジェクトをきっかけに新しいテーマ、そして未来の事業が生まれることを期待したい。

<November.2017 吉村 祐子(WAO事務局)>

【講師プロフィール】
小林泰紘
株式会社biotope Creative Catalyst / Intrapreneurship Enabler

世界26ヶ国を旅した後、株式会社Impact HUB Tokyo 創業メンバーとして、社会的事業を行う起業家支援に従事。その後、人間中心デザインをベースとしたコンサルティングファームにて、金融、人材、製造など幅広い業界の大手企業の事業開発やデジタルマーケティング支援、顧客体験(UX)デザインを手掛けた。現在は共創型戦略デザインファームbiotopeにて、企業のR&Dや未来ビジョンづくり、創造的な組織への変革などを支援。共創型ファシリテーションや事業創造型人財の育成を軸に、企業の事業創造や組織づくりを伴奏する。個人の思いや生きる感覚を起点に、次の未来を生み出すための変革を仕掛けていく”イントラプレナーシップ”をテーマに活動。通訳案内士。

PROJECT

富士フイルム×凸版印刷 共創プロジェクト「cyan」

イメージ1

研究所の技術者を中心に集まった両社のメンバーが、外部のファシリテーターにアドバイスを受けながら、未来視点での社会課題とその解決策の仮説を考えるプロジェクト。既存の領域にとらわれず、自分がやりたいと思うテーマを深耕していき、解決策を創出することに重点を置いている。プロジェクト名のcyan(サイアン)は、両社のコーポレートカラーである緑色と青色を混ぜた色であることから、参加メンバーが混じりあったプロジェクトにするという意を込めてつけられている。


富士フイルム×凸版印刷 共創プロジェクト cyan

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