EVENT REPORT

Feb 2019

落語家に学ぶ、人を惹きつけるコミュニケーションの極意

話すうえで大事なことは、目の前にいるお客さんに合わせること

話すうえで大事なことは、目の前にいるお客さんに合わせること

話すうえで大事なことは、目の前にいるお客さんに合わせること

さまざまな場所に呼ばれる機会の多い竹千代さんだが、噺をする上で、“客層を読む”ことが何より大事だという。

「いろいろな過酷な環境で噺をしてきましたが、場に応じて話し方は変えています。例えば、飲みの場であれば、お客さんが酔っ払ってしまう。そういう場では、オチまでの仕込みが長い噺だと聞いてもらえないので、すぐにオチが来る小噺などをしていきます」。

また、小学校などで子ども向けにおこなうときは、ただ話すだけでは子どもたちが飽きてしまうので、クイズを出すなど参加型にしているという。

毎回、会場も違えば来ているお客さんも違うため、高座に上がった時点では、どんな噺が受けるのかは分からない。そこで、落語を始める前に、時事ネタや小噺、謎かけなどのマクラとよばれるものを使って、どんなお客さんなのか探るという。いろんなジャンルのマクラを振っていく中で、ウケがいいなと思った内容に合った落語をしていくのだ。

マクラの例として、今回の会場に合わせた「謎かけ」や「小噺」を竹千代さんに披露していただくと、会場には笑いが起こり、場の空気も和んだ。

以前、竹千代さんは春風亭昇太師匠に「プロの落語家とアマチュアの落語家の違いは、空気が読めるか読めないかにある。アマチュアは自分の話せる噺をするが、プロはその場のお客さんに合わせて話す」と教えられたという。竹千代さんは続けて、その意味をわかりやすく説明してくれた。

「料理に例えると、素人がするのはお父さんの料理。休日に自分が作りたいものを作るようなものです。一方、プロはお母さんの料理で、その日の家族の体調を考慮し冷蔵庫の中にあるありあわせの材料で料理を作ります」。

こうした話は落語の世界だけではなく、日常生活やビジネスのコミュニケーションにおいても参考となり、会場は竹千代さんの話に惹きこまれていった。

人を惹きつける、話し方のコツ

人を惹きつける、話し方のコツ

人を惹きつける、話し方のコツ

「プロの落語家として、一番大事でかつ難しいのは“間“の取り方だ」と竹千代さん。

「“間”というのは、個性であり、プロとアマの大きな差です。教科書がないので、場に挑んで体得するしかありません。前座修行の時は、“間”は気にしないで、とにかく明るく元気よくやれと言われましたが、二つ目となったいまは日々研究しています」。

また、笑いを生み出す基礎となるのが“フリとオチ”だ。落語の代表的なオチの種類として、滑稽話の1種にオウム返し(仕込み噺)というジャンルがある。オチに関する伏線を忍ばせながら話を進め、最後のオチに向けて伏線を回収していく話だ。

「緊張と緩和の差が笑いを生みます。例えば、ビジネスの場を盛り上げたいと思ったら、会議の場でどんどん小噺を入れていけばいいのではないでしょうか。全然ウケなかったとしっても“ウケなかったですね”といえばいいだけですから」。

落語家の間では、「1分間笑いがないとお客さんがだれてくるので、1分の間に笑いを入れた方がいい」といわれ、いかにお客さんを飽きさせないようにするかが大事だという。

まずは相手をよく知ることから

まずは相手をよく知ることから

まずは相手をよく知ることから

落語家は相手を喜ばせる商売のため、前座時代は気遣いを学ぶ修行とも言われている。

竹千代さんが所属している落語芸術協会には150人程の落語家が在籍しており、他の団体も含めると全国では800人程の落語家がいる。

前座修行中は、自分の師匠だけでなく、寄席に出る師匠全員のお世話をしなければならない。まずはお茶出しから学ぶが、師匠によって、お茶の濃さや熱さ、出すタイミングまで違っているため、一人ひとりの好みを覚えていく。着付けの手伝いも同様で、着物の畳み方から、風呂敷の中に入っている順番までそれぞれ異なっているものをすべて覚え、元通りの形でお戻しする。

そして、落語家が登場する際のBGMとなる出囃子に合わせて太鼓をたたくのも前座の仕事。全員が違う出囃子を使うため、すべて覚えなければいけない。

「私が入門した師匠の桂竹丸は、落語界でもとても気づかいができる人として有名です。師匠からは落語だけではなく、生き方も学びます。厳しい前座修行ですが、師匠からは、“師匠方を不快にさせないという気遣いが、高座に立ったときのお客様への気遣いに繋がる”と教えられてきました」。

実際に、普段から相手の事を喜ばせようという気遣いが、人柄や落語にも出てくるのだという。

それは、落語の世界だけではなく、一般の世界でも同じこと。自分の話を聞いてもらいたいと思ったら、まずはその相手について何が好きなのか、普段どのような生活をしているのか、事前に知ろうとする努力が重要だと、竹千代さんは最後に語ってくれた。

講演後には、話し方のテクニックとして教えていただいたことの実演を兼ねて、落語を2席ご披露いただき、終始笑いに包まれたままイベントは終了した。



<Feb.2019 藤村 祥子(WAO事務局)>

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落語家に学ぶ、人を惹きつけるコミュニケーションの極意

桂 竹千代

落語芸術協会所属の二ツ目。
明治大学大学院文学研究科古代日本文学専攻修士課程修了。大学在学中は漫才師として活動。大学院卒業後、桂竹丸門下 楽屋入り。
平成23年10月より前座「竹のこ」、平成27年に二ツ目昇進「竹千代」となる。
柔道弐段、学芸員、社会教育主事、温泉ソムリエなどの資格を有している。古代史を専攻した文学マスターで、日本神話の世界を語ることをライフワークとしている。
【公式サイト】落語家 桂 竹千代 http://katsuratakechiyo.club/

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