EVENT REPORT

Nov 2016

<コミュニケーション×テクノロジー>が
一次産業の未来を変える

マーケットではなく、コミュニティをつくる活動

マーケットではなく、コミュニティをつくる活動

そうした「東北食べる通信」の活動の共感は広がっていき、現在では東北だけではなく、全国各地で様々な「食べる通信」が誕生している。そして、その創刊団体は、企業や自治体、漁協組合、メディア関係者など、多様なプレイヤーが参画している。

「現在では全国で36もの『食べる通信』が創刊されています。僕たちは、こうした様々な『食べる通信』の編集部の連盟組織である『日本食べる通信リーグ』の運営もおこなっています。この運営でもっとも重要なのは、各地域の編集部の特性を活かし進めていくことです。なぜなら、『食べる通信』はマーケットをつくっているのではなく、コミュニティをつくっているからです。マーケットをつくっていくのであればユーザー100万人獲得とかを目指すのでしょうが、それぞれの『食べる通信』の読者数は、コミュニティ形成を考えて1000~1500人程度としています。そうなるとコミュニティのカタチは一つではないため、それぞれの編集長の独自性が必要になってきます。一つひとつのコミュニティは小さいかもしれませんが、そのコミュニティが100できれば10万人以上が生産現場の価値を理解することができますよね。それは自分たちが目指す‟つくる人と食べる人“つなげていく大きな原動力となっていきます」。

マーケティングの主体を生産者に変えていく

マーケティングの主体を生産者に変えていく

マーケティングの主体を生産者に変えていく

2016年9月に本間さんたちは「食べる通信」の成功体験を拡張していくために、農家・漁師から直接買えるオンラインマルシェの「ポケットマルシェ」を開設した。「ポケットマルシェ」には旬の食材や数量限定品、規格外として市場に出回らないお得な食材など、ここでしか出会えない食材が出品されている。

「『ポケットマルシェ』の開設によって、マーケティングをおこなう人の主体を変えていきたいと思いました。いままでは生産者はモノをつくって終わり。マーケティングの主体はスーパーや八百屋さんなどの販売者にあります。現在、多くのECサイトも存在していますが、実は、そこに参画している出品者は売るのが得意な流通やマーケティングを得意とする一部の生産者です。多くの中小規模の生産者はこういった仕組みに入ってこれなかったんです。その大きな理由は手間とインターネットのリテラシーです。そこで、『ポケットマルシェ』では生産者がスマホ一つで全ての業務が完結でき、配達についても、注文が入ると運送会社が売れた分の配送伝票を自動で持って来てくれる仕組みをつくりました。こうした手間を省くことによって、送ったあとは購入者とのコミュニケーションに時間をつくってもらうことができます。『ポケットマルシェ』内では生産者が自分専用のウォールを持つことができ、そこに購入者からのごちそうさまが届いてきます。購入を検討している人も生産者のウォールを見れば、どのような人が、どのような想いでつくっているのか見ることができます。たとえば“有機野菜”ということだけでなく、その先まで見ることができるようになるんです。これって買い物のカタチを変えていくんじゃないかと。『ポケットマルシェ』では、これからもその舞台を提供し、サポートしていきます」

しかしながら、マーケティングの主体を変えていき、コミュニケーションまでもおこなっていくことを生産者に浸透させていくには、未だ限界があると本間さんはいう。

「毎日、SNSをやっていくことは、やはり労力もいることで限界はあります。そこで、定期的に生産現場の写真を撮り、その写真を生産者へ届けていく『Kakaxi(カカシ)』という農地設置デバイスの活用を始めました。これは、生産効率をあげるためのセンシング目的ではなく、コミュニケーションの価値をアシストするテクノロジーです。こうしたテクノロジーが“つくる人と食べる人”をつなぐことによって、生産者の手による情報発信とテクノロジーによる情報発信が補完関係になることを目指しています」。

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<コミュニケーション×テクノロジー>が
一次産業の未来を変える

本間勇輝

本間勇輝

富士通(株)入社の後、(株)ロケーションバリューの創業に携わる。2006年取締役COO就任。2009年退社後(同社は2011年ドコモに売却)。その後、NPO法人HUGを創業し「東北復興新聞」創刊。2013年には NPO法人東北開墾を立ち上げ「東北食べる通信」を発行、現在は日本食べる 通信リーグを設立し、同モデルを全国に展開。2016年オンラインマルシェ「ポケットマルシェ」取締役に就任。
著書に「ソーシャルトラベル」「3YEARS 」。「東北食べる通信 」はGOOD DESIGN AWARD 2014の金賞を獲得。

東北食べる通信(http://taberu.me/tohoku/)
ポケットマルシェ(http://pocket-marche.com/)

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