EVENT REPORT

May 2018

「一冊の本を売る本屋」ができるまで

銀座の中心街から少し離れた静かな通りに位置する「森岡書店 銀座店」。そのコンセプトは「一冊の本を売る本屋」。約5坪ほどの店内には1冊の本と、その本から派生する作品が展示されている個性的な書店である。今回のWAOでは、森岡書店の店主、森岡督行さんをお招きしてイベントを開催した。

「一冊の本を売る本屋」ができるまで

「一冊の本を売る本屋」ができるまで

「一冊の本を売る本屋」ができるまで

森岡さんが「一冊の本を売る本屋」を着想したのは2007年ごろ。森岡書店銀座店を開く前に茅場町で営んでいた書店での体験がきっかけだった。

「茅場町の書店では作家さんの本だけでなく、本から派生する作品の展示やイベントおこなっていました。そこでは、一冊の本を通してお客さんが集まり、すごく豊かな会話が生まれていました。その体験が、『一冊の本を売る本屋』をやろうとしたきっかけです」。

その着想はすぐにカタチとはならず茅場町の書店で活動を続けていた森岡さんだが、その後、ある人との出会いによって「一冊の本を売る本屋」は実現に向かって加速をはじめた。その人とは、食べるスープの専門店「Soup Stock Tokyo」をはじめ、新しい事業を次々に生み出してきた株式会社スマイルズ代表取締役の遠山正道さん。

「2014年に、遠山さんが“新しいビジネスを創る”というテーマのイベントを開催することを知りました。そこで遠山さんに『一冊の本を売る本屋』のコンセプトを聞いてもらいたいと思った私はイベントに参加し、プレゼンをさせていただきました」。

森岡さんのプレゼンは遠山さんの共感を得ることに成功。そこから遠山さんとの打合せを重ね、「一冊の本を売る本屋」が具現化してきたという。

また「一冊の本を売る本屋」の実現に向けて、森岡さんが大切にしていたことがもう一つある。それは出店場所だった。

「多くの物件を見て回ったんですが、なかなか決まらなくて。少し諦めかけていたときに奇跡的に出会ったのが現在、入居する鈴木ビルのテナントでした。鈴木ビルは戦前、『日本工房』という編集プロダクションの事務所があった場所で、私は『日本工房』の雑誌が好きでコレクションしていたんです。そんなこともあり、鈴木ビルに空きがでたと聞いたとき、もうすぐに決めましたよ」。

「日本工房」とは1934年に当時の対外宣伝誌「NIPPON」を創刊し、日本の写真界、グラフィック・デザイン界の礎を築いた人たちを多く輩出した編集プロダクション。そうした歴史的背景のある場所で、現代の作家を紹介していくことに、大きな意味を感じたと森岡さんは話す。

そして2015年5月、様々な出会いを通して遂に「一冊の本を売る本屋 森岡書店銀座店」はオープンしたのだ。

独特の観点から生まれた「東京旧市街地」

独特の観点から生まれた「東京旧市街地」

森岡さんの活動は書店だけにとどまらない。展覧会の企画や執筆活動など様々な分野で活躍する。イベントでは森岡さんの著書「東京旧市街地を歩く」が、どのような観点からつくられたか教えてくれた。

「“東京旧市街地”って聞きなれない言葉だと思いますが、これは私がつけた名前なんです。旧市街地と聞くと、市場などの食処や骨董品がある街をイメージして、行ってみたくなりませんか。海外には、プラハやバルセロナ、ケルンなど旧市街地と呼ばれるところはあるんですが、東京にもそうした旧市街地があれば観光名所になるんじゃないかと思いまして、名付けてみました」。

著書では、旧行政区画の神田区、日本橋区、京橋区を旧市街地に選定し、明治以降に建てられた建物や橋などの建築物を写真とともに紹介。森岡さんがいうように東京を“旧市街地”といった視点から見ることで、見慣れているいつもの場所にも、改めて訪れてみたくなる気持ちにさせてくれる一冊だ。

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「一冊の本を売る本屋」ができるまで

森岡 督行

森岡書店 店主/ブックディレクター。1998年に神田神保町の一誠堂書店に入社。2006年に茅場町の古いビルにて「森岡書店」として独立。2015年5月5日には銀座に「森岡書店 銀座店」をオープン。著書に『写真集 誰かに贈りたくなる108冊』(平凡社)、『BOOKS ON JAPAN 1931-1972 日本の対外宣伝グラフ誌』(ビー・エヌ・エヌ新社)、『荒野の古本屋』(晶文社)など多数。

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