EVENT REPORT

Oct 2017

~現代美術家と考える~これからの「アート市場」

アート市場における世界と日本

アート市場における世界と日本

アート市場における世界と日本

2014年には約7兆600億円もの市場規模となったアート市場。同年の世界の美術品市場シェア(TEFAF「Art Market Report 2015」)を見てみると、米国が38.8%とトップ、続いて中国22.4%,英国21.9%となっている。一方、日本は0.7%と上位3カ国との差は大きい。

「他国に比べ富裕層の割合が多い日本ですが、現在の美術品市場シェアはこの通りです。では、民間企業や個人の資産家ではなく、国の支援はどうなっているのか。文化予算額についてはフランスが約4,000億円、韓国が約2,500億円あるのに対し、日本は約1,000億円であり、他国と比べ低い状況でもあります。アート市場が世界的に巨大産業となっているなか、日本は他国と比べて、まだ十分に参入できていないとみることもできます」。

なぜ、日本は他国と比べ、アート市場への参入に遅れをとっているのか。大村さんは個人の見解として、一つの仮説を述べた。

「これは私の仮説ですが、アート市場への参入が遅れた一つの要因として、太平洋戦争の『敗戦』があるのではないかと推測します」。


明治時代には、文明開化に伴い政府は文化予算を多額に拠出し、多くのエリートが西洋の文化を吸収して日本に持ち帰ってきた。そのうちの一人、岡倉天心が現在の東京芸術大学の設立に貢献。彼らが持ち帰った西洋美術は、主に写実主義・技術主義のものであり、この写実的に描く方法というものを独自の方法で日本らしく開拓したのが日本画というジャンルに発展していくなど、日本のアート市場における成果をあげていった。

しかし、太平洋戦争の敗戦を境に、状況は変わってしまったと大村さんはいう。

「敗戦後、貧困にあえぐ日本は文化予算に割く余裕はなく、ほとんどの予算を経済復興に回しました。その甲斐あって 80年代には経済大国に急成長。ここで余裕のできた日本人は昔の文化教養を取り戻すべく民間団体が支援団体を設立し、国内に大量の美術館をつくりました。しかし、経済に予算を使っていた日本は、その間に世界のアートの進化に取り残されてしまいました。知識は戦前のままだったのです。その結果どうなったかというと、アートへの投資の失敗です」。

バブル期に多くの日本企業が名画を超高額で購入するニュースが世界を賑わした。しかし、このニュースにこそ、大村さんがいう敗戦の影響が如実に表れていると話す。

「このニュースには、2つの問題があります。1つはその時代の注目の作家ではなく、昔の作家の作品を高額で購入したこと。2つ目には、国内ではなく外国の作家の作品を高額で購入したことです」。

当時、世界のアート市場はニューペインティングの時代ともいわれ、解りやすくいうとパンクロック的なアートの時代であった。「パンクロックといったら、教養なんてくそくらえ、過去なんてくそくらえ、いまを描いている作品がサイコーとか、そういう作品が多く評価されていました。その時代の潮流を無視して、遠い昔の作家の絵を超高額購入したことに対する海外のコレクターからの評価は、良いものではありませんでした」と、大村さんは話す。

また、日本の作家の作品ならまだ自国の支援というアピールができたかもしれないが、縁のゆかりもない外国作家の作品を購入したことが、さらにその評価を下げてしまったという。

「バブルの崩壊に伴い、これらの超高額な絵画を購入した企業は、次々に絵画を手放していきました。今後、こういった失敗を繰り返さないためにどうしたらよいのか。それは、日本のアート市場の整備だと思います。アート市場が整備されない限り、既に市場で価値を認められた昔の巨匠の作品ばかりが評価がされ、日本人の現役作家は育っていきません。日本のこれからのアートはどうすれば良いか。これからのアートの時代で私たちはなにをすべきか。アートに携わっている人だけではなく、多くの人たちと考えて、世界に太刀打ちできる日本のアート市場をつくっていきたいと思います」。

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~現代美術家と考える~これからの「アート市場」

大村 雪乃

現代美術家。2013年 多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻 卒業。在学中より文房具の丸シールで夜景を表現する絵画を発表し、素材の意外性とビジュアルの美しさで2012年Tokyo Midtown Awardのアート部門にて入選・オーディエンス賞を受賞。
現在は、丸シールで絵を描く独自の発想で夜景を中心に表現していくと共に、シールを貼るだけで絵を描くワークショップを開催して多くの人に表現する楽しさを伝えている。

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